無戸籍者の救済目指す「嫡出推定見直し」と子への体罰禁止 ~民法改正要綱案

小宮山洋子・元厚生労働相、ジャーナリスト
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民法の「嫡出推定」規定の見直しなどを議論している法制審議会の親子法制部会=東京・霞が関の法務省で2021年2月9日、村上尊一撮影
民法の「嫡出推定」規定の見直しなどを議論している法制審議会の親子法制部会=東京・霞が関の法務省で2021年2月9日、村上尊一撮影

無戸籍者の問題解決へ一歩前進

 法制審議会(法相の諮問機関)の親子法制部会は、2月1日、結婚や離婚の時期によって生まれた子の父親が誰かを決める「嫡出推定」の規定について、見直す内容の民法改正の要綱案をまとめました。

 離婚後300日以内に生まれれば「前夫の子」とする現行の規定に、「再婚後なら現夫の子」とする例外を加えます。出生時の夫婦が両親だとみなされるようになることに伴って、離婚後100日間の再婚を女性に禁じた規定もなくします。

 実際の父親ではない前夫の戸籍に入れたくないために起きる無戸籍者の問題が、以前から提起されていたので、一歩前進だと思います。14日の総会の答申を経て、法務省は、民法改正案の早期の国会提出を目指しています。

「懲戒権」を削除

 また、親権者に必要な範囲で子どもを戒めることを認める「懲戒権」を削除し、体罰禁止を明記しました。「しつけ」を口実に虐待が正当化されている、という指摘を受けた見直しです。

 これも、児童虐待の課題で、どこまでがしつけで、どこから虐待か長年議論されてきました。日本は、子どもの権利条約に批准しながら、子どもの権利を守る法整備が遅れていて、しつけのためなら体罰を許容する傾向が続いてきましたので、こちらもようやくという印象です。

明治時代からの規定

 それぞれの改正をみていきます。妊娠や出産の時期によって父親を推定している「嫡出推定」の制度は、明治31(1898)年に公布・施行された民法から続いているもので、離婚から300日以内に生まれた子どもは前の夫の子と推定することが規定されています。

 要綱案では、「〇再婚している場合は離婚から300日以内に生まれた子どもでも今の夫の子と推定する」「〇『前の夫』と『今の夫』で法律上、父親が重複する可能性がなくなることから、女性に限って離婚から100日間、再婚を禁止している規定を削除する」としています。

 また、「嫡出推定」による父親と子どもの関係を解消する「嫡出否認」の手続きも改めます。「〇現在は父親だけに認められている、申し立ての権利を子どもと母親にも拡大する」「〇出生を知った時から1年以内に限られている申し立ての期間について、出生か、それを知った時から原則3年に延長するほか、一定の要件を満たす場合に限り子どもが21歳になるまで申し立てができるようにする」。これも、妥当な改正だと思います。

無戸籍者が救済される可能性

 2020年9月末時点で、法務省が把握していた無戸籍者は、合計3235人です。法制審の親子法制部会の資料では、法務局でこれまでに把握した無戸籍者のうち、離婚後300日以内に生まれた子について、その母の再婚の有無及び時期についての傾向を分析しています。

 調査対象者数は1211人。離婚後300日以内に出生した子の数は808人。このうち、母が離婚後300日以内に婚姻し、その後に出生しているのが289人(35.8%)。母が離婚後300日以内に婚姻しているものが89人(11.0%)。両方の合計は378人(46.8%)となっています。この人たちは、今回の見直しで救われる可能性があります。

 一方、今回の見直しが実現しても救済が難しいケースもあります。…

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小宮山洋子

元厚生労働相、ジャーナリスト

 1948年生まれ。NHKアナウンサー・解説委員を経て、98年参院初当選。2003年衆院初当選。副厚生労働相、厚労相、少子化対策担当相などを歴任。13年に政界引退。