アフリカン・ライフ

ワクチン接種率0・3%の国で<下>現地で日本が感謝されている理由

平野光芳・ヨハネスブルク支局長
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新型コロナワクチンの接種を受ける女性=コンゴ民主共和国の首都キンシャサで2022年2月3日、平野光芳撮影
新型コロナワクチンの接種を受ける女性=コンゴ民主共和国の首都キンシャサで2022年2月3日、平野光芳撮影

 警察に賄賂を要求される場面もあったが、コンゴ民主共和国の首都キンシャサで各界各層の人の話を聞くうちに、接種が進まない理由がだんだんと見えてきた。私なりにまとめると次のようになる。

 ①検査・医療体制が貧弱でコロナの感染実態がよく分からない

 ②コロナで重症化しやすい高齢者の数が少ない

 ③マラリアをはじめとする他の感染症の脅威が日常的にある

 ④ワクチンを国際社会からの寄付に頼らざるを得ず、入手しにくかった

 ⑤国民の政府への信頼感が低いため、ワクチンに関するデマが広まりやすい

 ⑥政府の予算、行政基盤が貧弱で接種体制の整備が遅れている

 ①、②、③はそもそも国民のコロナへの関心、警戒感が低いということにつながる。もし日本政府が、マラリアのワクチンが開発されたのでマラリア撲滅のため国民全員に接種を受けてほしいとキャンペーンを始めたら、あなたは会場に足を運ぶだろうか。コンゴ国民のコロナに対する感覚はそれに近い。切迫感がない病気に対して行動を起こすのはなかなか難しい。

 またコロナ禍では富裕国が製薬会社からワクチンを優先的に確保してきた。コンゴを含む貧困国は世界保健機関(WHO)などが主導する「COVAX(コバックス)」からの寄付に頼らざるを得ず、調達が大幅に遅れた(④)。ただしこれは最近では徐々に改善しつつある。今後、接種率を向上させるためには⑤、⑥の克服が課題だ。ワクチンの冷凍保管、運搬、接種、対象者の管理といった前例のない大規模な取り組みが必要になる。

「接種したい」という声も

 キンシャサで取材を始めるまでは「99%の人が反ワクチンで凝り固まっていて、どうしようもないのでは」と想像していた。接種率が1%に満たない中では、接種経験者を探すことも困難だと思っていた。ただ街頭で市民に声をかけてみると、意外にも「接種してもいい」「接種した」という人は一定数いた。

 例えばキンシャサ市内の市場で携帯電話のSIMカードを売っていたモンバ・ジョージさん(43)は既に接種済みだった。「コロナに感染して1週間入院したことがあり、怖いと感じた。病院で亡くなった人の遺体を搬送する仕事もしているが、病院は出入りの業者にワクチン接種を義務付けている。接種しなければ仕事を失ってしまう」。

 また路上でティッシュなど小物を売り歩いていたムワンザ・ムメンバ・ディディエルさん(28)も昨年11月に接種したという。「人と接触する機会が多い仕事なので、自分を守るために受けた」

 市内の接種会場にいたミサラ・ジジ・マディマさん(40)は妻の接種に付き添いで来場していた。…

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平野光芳

ヨハネスブルク支局長

2001年入社。大津支局、福井支局敦賀駐在、大阪社会部、ジャカルタ特派員、奈良支局などを経て20年からヨハネスブルク支局長。共著に「なぜ金正男は暗殺されたのか」