DV被害者増加 さらなるDV防止法改正を

小宮山洋子・元厚生労働相、ジャーナリスト
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子ども時代にDVで受けた傷は大人になっても残る=東京都葛飾区で2011年12月11日、竹内幹撮影
子ども時代にDVで受けた傷は大人になっても残る=東京都葛飾区で2011年12月11日、竹内幹撮影

 DV(配偶者らからの暴力)の被害が18年連続で最多を更新しています。警察庁によると、被害は前年から0.5%増の8万3042件に上っています。コロナ禍での夫のいらだちが、妻に向けられている傾向が続いているとNPO法人「全国女性シェルターネット」では見ています。

 DVを防止するための法律を参院議員の時に超党派の議員立法として3年かけて作り上げ、2001年に成立させました。その後、改正を続け、定義の拡大、保護命令の拡充、対象を交際相手まで広げる、保護対象を同居家族に広げることなどが実現してきました。

 現在開かれている通常国会に、保護命令の対象に精神的暴力や性的暴力を追加するなどのさらなる改正案が提出されることになっています。残されている課題として、加害者更生プログラムがあり、懸案のままになっています。

増え続ける被害

 DV増加の現状を警察庁の昨年の被害についてのデータ(配偶者からの暴力事案等の相談等状況https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/stalker/R3_STDVRPkouhousiryou.pdf)から見てみます。件数は8万3042件で、前年から0.5%増えています。被害者の年代別では30代が26.4%で最も多く、20代が23.3%、40代が22.7%となっています。

 被害者のうち74.8%が女性ですが、男性の被害者も年々増えていて、昨年は最多の2万895人に上っています。

 接近禁止などの保護命令違反は69件、刑法などでの摘発は8634件です。暴行が5230件、傷害が2509件と大半を占めていて、殺人も2件ありました。

超党派の議員立法で始まった

 私が参院議員だった頃(1988~2003年)には、参院は人権などに対する議員立法が超党派で作りやすい状況でした。共生社会調査会という参議院独自の仕組みの中で、3年かけて、超党派の議員でDV防止法を作りました。

 当初は、男性議員から「そんな家の中でのことを国会という公の場で話すのは、とんでもない」などの発言がありました。しかし、当時、女性に対する暴力の問題が国連の人権に関する会議などで問題になっていて、日本も拠出して女性に対する暴力撤廃のための基金が作られるなどの国際的な流れがありました。また、総理府(現在の内閣府)の調査で、20人に1人が家庭内で命に関わる暴力を受けていることが明らかになり、調査会として取り組むことになりました。

 超党派の議員立法を成立させるためには、各党にキーパーソンが必要です。自民党の南野知恵子さんが座長、私が副座長を務め、プロジェクトチームで、いちから作り上げました。その際、NGOの皆さんと話し合いながら、専門の学者の方のアドバイスもいただき、当事者からも話を聞きました。法案を作ることができたのは、関係する省庁で一線で活動している課長、参事官などが、同席してチームで話し合っていくうちに法律を作る必要を感じ、省庁の中で合意を取り付けてくれたことも大きかったと思います。

罰則で苦労

 一番苦労したのは、日本の法律は民事と刑事に精緻に分かれていて、罰則つきの接近禁止命令は作れないとされていたことです。説得を重ねて、違反した場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金という罰則付きで実現しました。

 また、被害者保護のためのDVセンターを新たに作ることはできなかったので、婦人相談所などの既存の施設を相談支援センターとしました。民間シェルターへの援助の規定も置きました。まだ課題が残されているので3年をめどに検討する規定をつけました。

 その後、04年に保護命令の対象を子ども、元配偶者まで拡大等の第1次改正が行われました。07年には保護命令の拡充、市町村の基本計画の策定、DVセンターについての改正などの第2次改正が行われました。13年の第3次改正では交際相手からの暴力・その被害者にも法が適用されることになりました。19年の第4次改正では児童虐待と密接に関連するDV被害者の適切な保護が行われるよう協力すべき関係機関に児童相談所が明記され、保護の対象に被害者の同伴家族を含めました。

被害の繰り返しを防ぐために

 そして、現在開かれている通常国会に第5次の改正案が提出されることになっています。その内容は

 ■接近禁止を命じる「保護命令」の対象に、精神的暴力や性的暴力を追加

 ■保護命令が出された加害者の禁止行為にSNSでのつきまといや、GPSで…

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小宮山洋子

元厚生労働相、ジャーナリスト

 1948年生まれ。NHKアナウンサー・解説委員を経て、98年参院初当選。2003年衆院初当選。副厚生労働相、厚労相、少子化対策担当相などを歴任。13年に政界引退。