子ども・子育ての社会化は「未来への投資」

古賀伸明・元連合会長
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古賀伸明氏=内藤絵美撮影
古賀伸明氏=内藤絵美撮影

 2年強のコロナ禍は、日本社会の弱点を顕在化させている。経済格差や貧弱な医療資源、そしてデジタル化の遅れなどとともに、子ども・子育てをめぐる脆弱(ぜいじゃく)さも浮き彫りにした。

出生数の減少、虐待の増加、高い貧困率

 育児不安や「生み控え」が広がり、2020年の出生数は急激に減少し84万人、統計開始以降で最少となった。児童相談所への虐待の相談件数は、20年度に初めて20万件を超え、増加に歯止めがかかっていない。待機児童や経済協力開発機構(OECD)平均より高い子どもの貧困率などの問題も深刻だ。

 このような情勢の中で、政府は昨年12月末に「こども家庭庁」の新設を柱とする子ども政策の基本方針を閣議決定した。今国会に関連法案を提出し、2023年度のできる限り早い時期の創設をめざしている。

 行政の縦割りにより保健、教育、福祉の情報共有がなされず、重層的な課題を抱える子どもに対する支援が十分とは言えない現状から、情報を横断的に集約・分析し、強い総合調整機能を持ち、課題解決に当たる組織をつくるのは、ひとつの選択肢である。

 子どもをめぐる課題は多岐にわたり、包括的な対応が必要であり、子どもの権利を守り健やかな成長を支えるための司令塔として、新組織が果たす役割と責任は極めて重い。

縦割りは解消されたか

 しかし、縦割りの弊害をなくすと宣言しているにもかかわらず、省庁間の縦割り行政のデメリットの象徴で長年の課題である、幼稚園(文部科学省)と保育所(厚生労働省)、認定こども園(内閣府)の一元化は見送られた。厚労省と内閣府の部局が統合されるだけで、勧告権をもち一体的な対応を取るとはいうものの、あくまで別組織である。福祉と教育の統合としての幼保一元化抜きに、子ども政策を一本化するのは極めて難しいと思われる。

 行政組織の見直しも重要だが、それ以上に子ども支援全体の理念や目的を明確化し、政策の何をどう変えるのかを社会で広く共有することが重要だ。

子ども基本法案

 一方、近年、虐待やいじめ、不登校や貧困など子どもをめぐる状況は厳しさを増しており、「子ども基本法案」の策定に向けた議論が活発化している。

 日本政府は、1994年に国連「子どもの権利条約」の批准の際に、現行法で子どもの権利は守られているとの立場を取り、国内法の整備を行わなかった。そのことも含めて、国連「子どもの権利委員会」から、子どもの権利を守る日本の取り組みが十分ではないと、複数回にわたり勧告を受けていることが背景にある。

 議論の中での焦点は、子どもの権利に関して調査・勧告を行う第三者機関「子どもコミッショナー」の創設である。自民党では賛成の意見の一方で、伝統的な家族観を重んじるいわゆる保守派の議員を中心に「誤った子ども中心主義になる懸念がある」など反対論も多く、骨子には盛り込まれていない。

 また、「こども庁」から「こども家庭庁」の名称変更は、与党内から「子どもの教育は家庭が基盤」として「家庭」を明記するよう求める意見が出たからだ。

社会全体で

 確かに子育ての多くは家庭が担っているのが現実ではあるが、その在り方は多様で家庭だけでは子育てが困難な場合もある。…

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古賀伸明

元連合会長

1952年生まれ。松下電器産業(現パナソニック)労組中央執行委員長を経て、2002年電機連合中央執行委員長、05年連合事務局長。09年から15年まで第6代連合会長を務めた。現在は連合総研理事長。