ウクライナと台湾と日本の「明日は我が身」

長島昭久・元副防衛相
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長島昭久氏=須藤孝撮影
長島昭久氏=須藤孝撮影

 ロシアのウクライナ侵攻は、どうしても中国と台湾の関係に重なって見える。何倍もの軍事力を持った独裁国家が民主主義国を蹂躙(じゅうりん)する。

 陸続きと海峡という違いはあるが、外形的には非常に似ている。台湾の人たちは「明日は我が身」と感じている。日本国民の関心が高いのも、中国と台湾との関係にひきつけてイメージしているからではないか。

常任理事国の国際法違反

 ロシアと中国が国連安全保障理事会の常任理事国であることも共通している。国際法を守る立場の常任理事国が国際法を破る。ウクライナのゼレンスキー大統領は国会演説で、国連の機能不全を指摘し、国連改革での日本のリーダーシップに期待した。私にはそのメッセージが一番、心に刺さった。

 常任理事国からロシアを外す意見もあるが、実現性は乏しい。拒否権の制限を考えるべきだ。たとえば、紛争当事国であったり、核や生物・化学兵器を使うなど人道上の重大な違反があったりした場合は、拒否権を使えなくする。日本が過去に提案した常任理事国の拡大も追求する。

約束を破ったロシア

 核拡散防止条約(NPT)体制も崩壊の危機にある。ウクライナはブダペスト覚書(1994年)で、米国、ロシア、英国に安全を保障してもらう代わりに核を放棄してNPTに加盟したのに、ロシアから核で威嚇されている。今回もウクライナを中立化して安全を保障する案があるが、約束を破ったロシアをウクライナは信用することができないだろう。

 NPT体制で核兵器の保有が認められている5カ国は常任理事国と同じだ。常任理事国もNPTも「大人」である大国が責任を持って核を管理するという建前に基づいている。なのに、大人であるはずのロシアが核で威嚇をしている。NPT体制も崩壊の危機に直面している。

考え直す中国

 中国の反応は複雑だ。中国はロシアを米国中心の国際秩序に挑戦する同志とみていたはずだ。侵攻直前の2月4日、北京オリンピック開会式の際に行われた中露首脳会談の共同声明では「中露間の友情には限界がなく、協力には制約がない」とまで言っている。

 しかし中国としてはここまで本格的な侵攻と思っていなかったか、したとしても電撃戦で片付くと思っていたのではないか。中国にとっても想定外の事態だろう。

 ロシアへの経済制裁、特に外貨準備の凍結が迅速に行われたことは大きかった。中国の銀行の対外資産の7割はドル建てだ。ロシアと同じように中国を世界経済から排除することは難しいが、それでも経済制裁の威力は中国にとり教訓になったはずだ。

 今や中国も「ロシアと距離を置かざるを得ない」と考えているかもしれない。台湾についても「そう簡単ではない」と考え直しているのではないか。

ウクライナの抵抗から日本が学ぶこと

 バイデン米大統領が早期に軍事オプションを封じたことに批判がある。しかし、私は少し異なる見方をしている…

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長島昭久

元副防衛相

1962年生まれ。米外交問題評議会上席研究員などを経て、2003年衆院初当選。首相補佐官、副防衛相などを歴任。衆院比例東京。当選7回。自民党二階派。