核放棄したウクライナ「核の威嚇」で目的を遂げさせてはいけない

猪口邦子・元少子化担当相
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猪口邦子氏=内藤絵美撮影
猪口邦子氏=内藤絵美撮影

 ウクライナは旧ソ連時代の核兵器を自ら放棄し、非核兵器国となって、核兵器不拡散条約(NPT)に加盟した。その前提に米国、ロシア、英国が署名した「ブダペスト覚書」という文書があり、ウクライナの安全保障を約束している。そのような国に対して、ロシアが軍事侵略を行うなど、絶対にいけない。

「核兵器を放棄したから」は誤り

 「ウクライナは核兵器を放棄したから侵略された」という誤った結論を出してはいけない。そのような考え方は核不拡散体制の根幹を揺るがす。多くの国がそう考えて核兵器を持ち始めると、偶発戦争や誤操作の確率が高まる。核兵器のような大量破壊兵器は、数を減らし、保有者をできるだけ限定し、廃絶につなげるしかない。

 アジアで言えば、北朝鮮が「ウクライナは核を放棄したから侵略された」と思うようになってはならない。北朝鮮はNPTに一度加盟して、脱退した唯一の国だ。北朝鮮にとって、理論的にも政治的にも正しい唯一の道は核兵器を廃棄してNPTに復帰することだ。

 21世紀においては、核の威嚇をしたり、軍事侵略をした国が、その目的を完全に達成することは絶対にないということが非常に重要なメッセージだ。北朝鮮も含め、「核兵器を持っていてもできることは何もない」と理解する必要がある。

日本は経済で反撃できる

 だからなんとしても外交協議に持ち込まなければならない。戦争とは違い、外交には完全勝利はない。外交交渉になればウクライナもある程度譲らなければならないが、ロシアも譲らなければならない。そのテーブルにロシアを座らせるために経済制裁がある。

 今回、北大西洋条約機構(NATO)は軍事的な反撃を選択しなかった。これまでの歴史では、軍事侵略には軍事的な反撃が当たり前だった。しかし、現在は主要7カ国(G7)という成熟した体制がある。結束して経済制裁ができる。経済制裁によってロシアは非常に厳しい状況になり、そのために停戦交渉のテーブルにつきはじめている。

 日本はそのG7のなかで2番目の経済規模をもっている。日本の経済力で平和的な反撃が成立している。

プーチン氏に道を残している

 ロシアは早い段階から、事実上、核による威嚇をしている。けれどもロシアが核による威嚇をした後も、G7はSWIFT(国際銀行間通信協会)からの排除など、経済制裁を強めている。ロシアのプーチン大統領が軍事的に威嚇しても、こちらは経済という別のコートで打ち返している。これは、1962年のキューバ危機の際に、ケネディ米大統領がとった手法と似ている。

 当時米国内で、いますぐ攻撃すべきだ、あるいは部分的核戦争もやむを得ないという議論があるなかで、ケネディは海上封鎖という方法をとった。ポイントは海上封鎖だけではソ連のフルシチョフ書記長はミサイル撤去には追い込まれないこと…

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猪口邦子

元少子化担当相

1952年生まれ。上智大法学部教授、軍縮会議日本政府代表大使などを経て、2005年衆院初当選、10年参院初当選。参院千葉、衆院当選1回、参院当選2回。自民党麻生派。