国家千年の計
安定的な皇位継承をいかに実現するか――これは日本で最大の懸案事項の一つであり、私は立憲民主党の検討委員会委員長として危機感を持って真摯(しんし)に取り組んでいく覚悟だ。日本の根幹であり、この問題を議論することは「国家百年」どころか「国家千年の計」といえる。
その議論の基になる有識者会議の報告書が今年1月、政府から国会に示された。天皇退位に関する皇室典範特例法の付帯決議に基づいて議論されたもので、付帯決議で求めた「安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等」についての検討結果が書かれているはずだった。しかし、その中身は疑問だらけであり、国会を軽視したものだったと言わざるを得ない。
遅すぎる、危機感がない
そもそも報告が遅すぎる。特例法は2017年に制定され、19年4月30日に施行された。しかし、有識者会議が設置されたのは21年3月と施行から既に約2年も経過してからだった。付帯決議には「本法施行後速やかに」と記載されているのにもかかわらずだ。
しかも、安定的な皇位継承については「機が熟していない」として回答していない。遅い上にさらに先送りしてしまったのだ。これは「皇族方の御年齢からしても先延ばしすることはできない重要な課題」とした付帯決議を真っ向から否定するものであり、国会軽視も甚だしい。
天皇陛下の次の世代で皇位継承権を持つのは今春、高校に進学された悠仁(ひさひと)さま、お一人だ。16年にはその悠仁さまが乗っていたワゴン車が乗用車に追突するという事故が起きた。また、19年には、中学校で悠仁さまの教室の机に刃物2本が置かれているのが見つかる事件も起きている。幸い、いずれも悠仁さまはご無事だったが、このような状況で皇位継承問題を棚上げするとは考えられない。次世代の皇位継承権がたった1人しかいないことに対する危機感がなさ過ぎる。
現在の皇室典範のままでは、悠仁さまがご結婚し男児を授からなければ、皇統が断絶してしまう。悠仁さまはもちろんのこと、悠仁さまに嫁ぐ妃殿下の精神的負担は計り知れない。上皇后さまも皇后さまも大変苦しい思いをされたと思うが、それ以上の重圧となるだろう。
さらにご結婚後は、皇統の存続がかかるという想像を絶するプレッシャーの中、公務という激務もこなさなければならない。それに耐えられる女性がいるのか。そのような皇室に自分の娘を嫁がせようとする親御さんがいるのか。ご結婚一つとってもハードルが高くなっている。
「女系天皇」をなくすための時間稼ぎ?
私が首相を務めているとき、皇族の減少対策として女性皇族が結婚後も皇室に残れるようにする「女性宮家」創設を検討したが、政権交代があり、論点整理までしか進めなかった。
子も皇族の身分となる女性宮家を想定していたため、「女系天皇につながる」として男系の皇統維持を主張する人々から強い反対を受けており、自民政権下では黙殺さ…
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