「売春防止」からようやく脱却 女性支援新法案 超党派で成立へ

小宮山洋子・元厚生労働相、ジャーナリスト
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困難を抱える女性を支援する新法案の提出を目指して開かれた超党派議員会合=東京都千代田区で2022年2月16日、塩田彩撮影
困難を抱える女性を支援する新法案の提出を目指して開かれた超党派議員会合=東京都千代田区で2022年2月16日、塩田彩撮影

 DV(配偶者からの暴力)や性被害、生活困窮などに直面する女性への支援を強化する新しい法案が、超党派でまとめられました。4月12日に、参院先議で参院厚生労働委員会に委員長提案されます。現在のDVや性暴力の被害者などを支援する事業「婦人保護事業」は、66年前の1956年に制定された「売春防止法」に基づいていて、時代や現状に合わなくなっていました。

女性の福祉増進と人権の尊重

 新しい法案では、目的に「女性の福祉増進」と「人権の尊重」を明記しています。国が基本方針を、都道府県が基本計画を策定し、自治体と民間団体との連携も盛り込まれました。今回、超党派の議員立法として提案されたことは意義があり、委員長提案は各党間の合意に基づいて提出されるものなので、成立が見込まれ、2024年4月に施行される予定です。

 私が国会議員をしていた時にも、そうした女性を支援している団体や学者の方たちとともに、売春防止法の改正に努力しましたが、実現には至りませんでした。DV防止法、児童虐待防止法など人権に関わる法案は、これまでも超党派の議員立法として作られてきたものが多くなっています。

 今回も、自民党の上川陽子議員、立憲民主党の阿部知子議員、公明党の山本香苗議員、日本維新の会の梅村聡議員、国民民主党の矢田稚子議員、日本共産党の倉林明子議員などが中心となり、DV防止などの問題に精通している学者の戒能民江さん(お茶の水女子大名誉教授)たちの協力を得て、新しい法案が取りまとめられました。

 超党派の議員立法を成立させるためには、そのテーマに詳しく、各党内で了解を得られる力のある議員が連携することが大事だと、経験から感じています。

売春防止法の見直し

 新法が必要な現状を、みていきます。現在、困難な状況の女性を支援する事業は、「売春防止法」に基づいて行われています。その「売春防止法」は、売春を助長する行為等を処罰するとともに、女性だけを補導、保護更生させる、という男女平等に反するもので、見直しの必要性が言われ続けていました。

 DV防止法を作った時(01年)に、そのための新たな施設を作ることはできなかったため、「売春防止法」をその部分だけ改正して、婦人相談所を配偶者暴力相談支援センターの機能を担う施設の一つとしました。抜本的な改正は、今回が初めてになります。

 今回の新法「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律案」では、目的は、売春を行うおそれのある女子の保護更生を行う売春防止法から脱却し、「困難な問題を抱える女性の福祉の増進を図るため、支援のための施策を推進」「人権が尊重され、女性が安心して、かつ、自立して暮らせる社会の実現に寄与」としています。

「女性自立支援施設」へ

 定義としては、「困難な問題を抱える女性」とは、「性的な被害、家庭の状況、地域社会との関係性その他のさまざまな事情により日常生活または社会生活を円滑に営む上で困難な問題を抱える女性(そのおそれのある女性を含む)」とされています。

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小宮山洋子

元厚生労働相、ジャーナリスト

 1948年生まれ。NHKアナウンサー・解説委員を経て、98年参院初当選。2003年衆院初当選。副厚生労働相、厚労相、少子化対策担当相などを歴任。13年に政界引退。