1回きりでごまかそうとした
自民、公明両党が提案した年金受給者への5000円給付が世論の強い反発を受けた。
4月から年金額が減額されるのは、2016年に成立した年金制度改革関連法で導入された、現役世代の賃金低下に合わせて年金給付の抑制を強化するルールによるものだ。
それを補うとして、参院選を前に1回だけ、5000円というあまりにも選挙目当ての提案だった。これまでも与党は地域振興券を配ったり、消費税率の引き上げを延期したり、たびたび選挙目当ての政策をとってきた。そのことも世論に見透かされた理由ではないか。
我々は16年の制度改正を「年金カット法」と呼んで反対した。政府・与党は政策の誤りを認めるべきだ。04年の制度改正で、物価や賃金の上昇幅よりも年金額の伸びを低く抑える「マクロ経済スライド」を導入した際、与党は「100年安心」と言ったが、安心になったのは国民ではなくて財政だった。
年金制度は将来の安心を長く確保するためのものだ。ところが1回きりの5000円の給付で済ませようとした。政策の名に値しない。
日本の個人消費が伸びないのも将来に不安があるからだ。「長生きしてしまうリスク」といわれるような時代だ。国民が求めているのは年金制度の仕組みを土台から構築しなおし、強化することだ。政府・与党が持続可能と言っても国民からはまったく信用されていない。
苦しくなる年金生活者
出生率が下がり、平均余命は延び、現役世代の所得は減っている。「年金カット法」とマクロ経済スライドのもとでは、今後も年金の減額は続く。すでに低所得の年金受給者は生活が成り立たなくなっている。特に平均余命が長い女性は、単身の低所得者が増えており…
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