日本外交の現場から

「日米豪印プラス韓国」で中国けん制? 実現可能性はあるか

大貫智子・政治部記者
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米陸軍関係者と話す尹錫悦氏=韓国・平沢(ピョンテク)市の在韓米軍ハンフリーズ基地で2022年4月7日、ロイター
米陸軍関係者と話す尹錫悦氏=韓国・平沢(ピョンテク)市の在韓米軍ハンフリーズ基地で2022年4月7日、ロイター

 やはり、外交も感情のある人間同士が行うものだと改めて感じさせられる。日本と韓国の話である。日韓関係改善を掲げた保守系の尹錫悦(ユン・ソンニョル)氏が3月の大統領選で勝利し、双方に一定の期待はあるものの、積み重なった不信感は特に日本側で拭えないようだ。

 というのは、日米豪印4カ国(クアッド)の韓国参加をどう考えるか、と複数の日本政府関係者に尋ねると、一様に冷淡だったためだ。尹氏はクアッドへの段階的な参加に意欲を示すものの、日本では「クアッドは対中ヘッジのための枠組みなのに、本当に中国より日本を選べるのか」と疑念が消えない。韓国がクアッドに参加する日は来るだろうか。

クアッド参加に前向きな韓国

 「クアッド傘下の(新型コロナウイルス感染症の)ワクチン、気候変動、新技術のワーキンググループへの参加及び今後の正式加入を模索する漸進的アプローチを追求」

 「クアッドについて、米国が中国けん制より、さまざまな分野における域内協力を強調したことで、韓国が選択的な参加をためらう理由はほとんどなくなった」

 3月29日、慶応大と韓国・グローバル戦略協力研究院の主催で、日韓関係に関するセミナーが開かれた。参考資料として出席者が提出した文書を見ると、韓国側の9人の識者のうち、実に7人が韓国のクアッド参加について言及した。正式参加の可否はいったん脇に置き、まず個別の協力案件から参加すべきだという方向性で一致していた。5月下旬に東京で開かれる見通しのクアッド首脳会議に尹氏がオブザーバー参加すれば、自然な形で日米韓や日韓の首脳会談を開催できるのではないか、との見方もあった。

 4月上旬に訪米した尹氏の外交ブレーン団によると、米ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)でインド太平洋調整官を務めるキャンベル氏は、「韓国のワーキンググループ参加を歓迎する」と述べたという。これに呼応するように尹氏は14日付の米紙インタビューで、クアッドのワクチンや気候変動などの実務グループに協力する意向を示した。

 韓国の段階的な参加に向けて水面下で協議が始まっているのではないか。そんな私の推測は早合点だったようだ。

「中国との間で揺れている」 不信感根強い日本

 「韓国は中国との間で揺れており、クアッドで何ができるのか。それより、インドをどう根付かせるかが重要だ」

 「米国が言えばどうぞ(参加を)、なんていう簡単な話ではない。4カ国でも調整が大変なのに、韓国が入ってきたらどうなるのか」

 クアッドの現状をよく知る複数の日本政府関係者は、私の問いに苦笑するばかりだった。最も印象的だったのは、この言葉だった。

 「今、日本の中で韓国をクアッドに入れようと考えている人はいない。クアッドは日本が作り上げてきた枠組みだ。感情的に、韓国が入ることを歓迎する雰囲気はない」

 中国の台頭に対し、日本が日米豪印の枠組みを提唱したのは第1次安倍政権の時だ。当時、中国への関与や協調を重視していた米国、豪州、インドはいずれも冷ややかだった。地道に育ててきた自負のある日本としては、突然韓国が参加に意欲を示しても素直に喜べない、というのである。

韓国の対中世論は年々悪化

 日韓両国の対照的な姿勢は、世論を反映している側面もある。非営利団体「言論NPO」と韓国のシンクタンク「東アジア研究院」が2021年9月に発表した共同世論調査で、中国に良い印象を持つと答えた韓国人は10・7%にとどまった。…

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大貫智子

政治部記者

神奈川県生まれ。2000年入社。前橋支局、政治部、外信部を経て13~18年ソウル特派員。12年と16年に訪朝し、元山や咸興、清津など地方も取材した。論説委員、外信部副部長を経て、21年4月から政治部で日本外交を取材。ソウル駐在中から取材を始めた日韓夫婦の物語「帰らざる河ー海峡の画家イ・ジュンソプとその愛」で小学館ノンフィクション大賞を受賞した。「愛を描いたひとーイ・ジュンソプと山本方子の百年」と改題し、刊行。