崩れる「家族依存型福祉国家」 孤独・孤立の連鎖を防ぐ

古賀伸明・元連合会長
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古賀伸明氏=小川昌宏撮影
古賀伸明氏=小川昌宏撮影

 わが国で初めて政府が調査した、孤独・孤立の問題についての実態調査結果が4月8日に公表された。調査期間は昨年12月~今年1月、調査対象は16歳以上2万人、回答者数は1万1867人である。

若者も孤独に悩む

 全体で孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人の割合は4.5%、「時々ある」と「たまにある」も合わせると36.4%の結果である。年代別に見ると、同様の合計で20代が44.4%、30代が42.2%、60代が33.4%、70代が28.7%。孤独・孤立は高齢者の問題と思われがちだが、若い人でも深刻であることが改めて認識される結果である。

 「望まない孤独」の著者である大空幸星氏が代表を務めるNPO法人「あなたのいばしょ」と早稲田大学が、今年2月に20歳以上約3000人を対象にした調査結果でも、全体で37.3%が孤独感を感じているなか、20代で42.7%、60歳以上で23.7%と、若い世代が孤独感を感じる人が多いことが明らかになっている。

 「あなたのいばしょ」の設立時(2020年3月)には、月平均1000件程度の相談が現在は月2万件を超え、利用者の約8割が10~20代という。

社会的孤立の深刻化

 孤独・孤立と関連する自殺者数は、20年に前年比4.5%増の2万1081人で、リーマン・ショック直後以来11年ぶりに増加した。男性は11年連続で減少したが、女性は前年比15%増、若者の増加も目立つ。

 21年は2万1007人で、11年ぶりに増加した前年を74人下回るが、依然として高い水準だ。「望まない孤独」や「社会的孤立」が深刻化したことも大きな要因であろう。

 世界でも孤独問題への取り組みが進んでいる。先進的な英国は17年政府が主導して調査を行い、人口の13%超が孤独を抱え、経済損失が年間4.7兆円と試算した。18年には孤独担当大臣が新設され、各省の横断的な組織が民間と協力し、カフェや文化的な拠点といったさまざまな居場所をつくっている。

 日本も21年に孤独・孤立対策担当相が設置され、「孤独・孤立対策担当室」が新設された。今年2月25日には、孤独・孤立を感じている人を支援するため、民間団体とつくる「官民連携プラットフォーム」の設立総会を開いた。冒頭の政府として初めての実態調査も、担当相が新設された成果といえる。

 実態調査の結果から課題を整理し、指標をつくり効果が検証できる体系を整備して、支援を急ぐ必要がある。「官民連携プラットフォーム」の目的である、民間団体や自治体との連携が欠かせず、民間の知恵やアイデアを活用すべきだろう。また、実態調査は単発な調査にとどまらず、政府の他の大規模調査に孤独・孤立に関する指標を組み込むことによって、長期的な対応と検証に取り組むべきである。

孤独・孤立は社会全体の問題

 孤独や孤立の課題は、社会の変容や構造的な問題と密接にかかわっている。日本は「家族依存型の福祉国家」といわれ、家族の支え合いが強い社会だった。しかし、家族構成は1人暮らしが急速に増えるなど大きく変化した。地域や企業内で支え合う「地縁」や「社縁」も弱体化しているところに、コロナ禍が追い打ちをかけ、「孤独・孤立」がより深刻化し、顕在化した。

 コロナ禍で人と人がつながることの意味や、社会のありようが問い直されている。いうまでもなく、人は一人では生きていけない。頼れる家族がいなくても、社会の中で支え合うことが重要だ。孤独や孤立は社会全体の問題である。

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古賀伸明

元連合会長

1952年生まれ。松下電器産業(現パナソニック)労組中央執行委員長を経て、2002年電機連合中央執行委員長、05年連合事務局長。09年から15年まで第6代連合会長を務めた。現在は連合総研理事長。