
ロシアとドイツの関係が急激に悪化している。引き金を引いたのは、ドイツのショルツ首相だ。4月19日、ベルリン発のロシア国営タス通信は、こう伝えた。
<オラフ・ショルツ独首相は、ウクライナでロシア軍の勝利を許してはならないと呼びかけた。このことをショルツは、火曜日(19日)に西側諸国指導者が参加したビデオ会議の結果についての記者会見で述べた。会議にはジョー・バイデン米大統領、アンジェイ・ドゥダ・ポーランド大統領、エマニュエル・マクロン仏大統領、クラウス・ヨハニス・ルーマニア大統領、ボリス・ジョンソン英首相、岸田文雄・日本国首相、マリオ・ドラギ伊首相、シャルル・ミシェル欧州理事会議長、イエンス・ストルテンベルグ北大西洋条約機構(NATO)事務総長、ウルズラ・フォンデアライエン欧州委員会委員長も参加した。
「欧州連合(EU)並びにNATOにおけるパートナーと共にわれわれは、この戦争でロシアが勝ってはならないとの見解で完全に一致している」とショルツは述べた。ショルツはプーチン露大統領に以下の言葉で呼びかけた。「ウクライナの都市への攻撃をやめなさい。直ちに和平を実現し、兵士を引き揚げなさい。この恐ろしい戦争をやめなさい」
ショルツはウクライナにおけるロシアの特別軍事行動を「無意味な戦争」であり、「国際法に対する深刻な侵犯だ」と決めつけた。現状においてモスクワは西側の結束を計算していないとショルツは考えている。「国境と領土の一体性に対する不侵犯がヨーロッパ安全保障の基本原則である」と首相は強調した。>
戦争の獲得目標は
ショルツ氏の発言で、ロシアを刺激したのは、「EU並びにNATOにおけるパートナーと共にわれわれは、この戦争でロシアが勝ってはならないとの見解で完全に一致している」という表現だ。これまで、主要国の指導者は、ウクライナにおける戦争の勝敗ラインを明確にしていなかった。ショルツ氏の述べるロシアを勝利させないというのが西側諸国の目標となるならば、当面、停戦は不可能になる。
もっともこの戦争の目標については、ウクライナとロシアの見解は大きく異なる。
4月16日、ウクライナのゼレンスキー大統領は、「我々は領土と国民については取引はしない」と述べた。このことはウクライナの目標が、現在、ロシア軍が制圧しているウクライナの東部、南部の地域だけでなく、2014年にロシアが編入した、クリミアに対する主権をウクライナに取り戻すことも含まれる。
この目標を達成することは、ロシアとウクライナの軍事力と国力を総合的に考えた場合、不可能になる。ショルツ氏の、ロシアを勝利させないという目標がゼレンスキー氏と同一ならば、…
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