ウクライナ人限定なのか 難民支援が新たな差別を生んではならない

古賀伸明・元連合会長
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ウクライナ難民の赤ちゃんを抱く消防士=ウクライナとの国境にあるルーマニア北部のシレトで2022年3月7日、AP
ウクライナ難民の赤ちゃんを抱く消防士=ウクライナとの国境にあるルーマニア北部のシレトで2022年3月7日、AP

 難民は世界で増え続けている。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は2020年末現在、世界で過去最多の8240万人にのぼると報告した。10年前の2倍である。

 1951年締結の難民条約は、当時の国際情勢から難民を限定的に定義した。自国政府から「迫害を受けるおそれ」という要件があり、戦争や武力紛争から逃れた人は対象から外された。

 その後、国際情勢の変化とともに人権概念も変わり、難民の範囲の解釈は各国の裁量に任されているのが現実だが、国際社会ではより柔軟な解釈が主流となっている。UNHCRは2016年、国際的保護に関するガイドラインで、国家間を含む武力紛争や暴力による避難者を難民と認めている。

厳格な日本の難民認定

 ただし日本の場合、難民認定は厳格な運用で、欧米諸国と比較して認定者数は極端に少なく抑えられている。日本は1981年に難民条約に加入。1982~2020年に申請した8万5479人のうち841人しか認定していない。2020年、主要7カ国の各国が数千~数万人を受け入れたのに対し、日本で難民認定された人は、わずか47人。認定率は1%にも及ばない。

 日本は難民の受け入れに後ろ向きだとして、経済規模に見合っていない「難民鎖国」などと、海外から批判の声もあがってきた経緯がある。

 国際社会から厳しく非難されているロシア軍によるウクライナ侵攻は長期化し、この間、600万人を超えるウクライナ人が近隣諸国を中心に逃れた。

 日本も難民には該当しないが、人道的な配慮から特例の「避難民」として受け入れている。即時に短期滞在ビザが発給され、その後の就労も認められた。身元保証人も要らないし公的支援もある。今回、「避難民」として当面は最大90日間の「短期滞在」資格で入国させ、1年ごとの「特定活動」資格に切り替え、更新可能としている。

 これは戦争や紛争で命の危険にさらされている人たちへの当然の対応であり、緊急避難措置としての日本政府の対処は適切である。

ウクライナだけか

 しかし、大きな問題は、これらの支援がウクライナ人限定であることだ。他国の人は厳しい要件をクリアしなければ日本へのビザ申請すらできない。迫害を恐れてシリアやアフガニスタンなどから来日した人との格差が指摘されている。…

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古賀伸明

元連合会長

1952年生まれ。松下電器産業(現パナソニック)労組中央執行委員長を経て、2002年電機連合中央執行委員長、05年連合事務局長。09年から15年まで第6代連合会長を務めた。現在は連合総研理事長。