米国債売却で「消費税率ゼロ」の財源に

森永卓郎・経済アナリスト、独協大学教授
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森永卓郎氏=武市公孝撮影
森永卓郎氏=武市公孝撮影

バブルがはじけ始めた

 米国の連邦準備制度理事会(FRB)は、5月4日に短期金利の誘導目標を0.5%引き上げて、0.75%から1%とすることを決めた。0.5%の大幅利上げは、22年ぶりだ。

 私はインフレ抑制のため今後も急速な金融引き締めは、続くとみている。4月で8.3%に達している消費者物価上昇率を目標の2%まで沈静化させるのは容易なことではないからだ。実際、短期金利と異なり市場で決まる長期金利は、すでに3.0%まで上昇している。

 ただ、強い金融引き締めが、景気の減速と株価の下落をもたらすことは、常識だ。実際、5月13日のNYダウは、3万2196ドルで、1月4日と比較すると、4600ドルも下がっている。私は、これからもっと米国株は下がるだろうとみている。完全なバブルを起こしてきた米国株価が、年初にピークを迎え、すでにその調整過程に入っていると考えるからだ。

 今年の年初、米国株はとんでもない割高になっていた。例えば、株価の割高指標の一つであるバフェット指数(株式時価総額÷GDP)は、1月3日に210%に達した。適正水準は80~100%とされるから、本来より2倍以上高い株価がついていたことになる。ちなみに5月13日にはそれが170%まで下がっている。

 また、1倍が適正と言われるPSR(株価売上高比率)でみても、年初は約3倍となっていた。とてつもない割高だ。

 さらに25倍を超えたらバブルと言われるシラーPER(株価収益率)も、1月3日に39.9倍に達した。それが5月12日には、30.6倍に下がっている。

 このように米国の株価は、どの割高指標でみても、今年の年初には、強烈なバブル状態だったのだ。それがいま急速な調整過程に入っている。

 また、今回のバブルは株式だけでなく、コモディティー(商品)市場も一斉に値上がりしたことが特徴なのだが、例えばニューヨーク原油は、3月6日の1バレル128ドルがピークで、5月9日は102ドルまで下がっている。小麦も同じで、3月7日に1ブッシェル14ドルのピークを付けたが、5月9日は11ドルだ。

 結局、ロシアのウクライナ侵攻で、商品市場は一時的な高騰をみせたものの、すでにピークアウトしたと考えられるのだ。ウクライナ戦争が、エブリシング・バブル崩壊の下支えをしたのだが、その効果も消えかかっているということだろう。だから、これで戦争が終われば、商品価格とともに株価も大きく下落する可能性が極めて高い。

 原油や小麦の需給逼迫(ひっぱく)懸念がなくなるからだけではない。世界最大の産油国で兵器生産国である米国経済は、戦争特需の喪失に加えて、金融引き締めの景気抑制効果がきいてくる。さらに中国のゼロコロナ政策継続で、中国経済が急減速するあおりも受けるのだ。

米国資産は売り時

 そうなると問題になるのは、米国株がどこまで下がるのかということだ。これまで米国株の最大の下落は、1929年10月の暗黒の木曜日からの暴落だった。だが、実は短期間で暴落したのではなく、最安値になったのは3年後の1932年7月だった。そのときの株価は、暴落直前の最高値から90%も下がった。ちなみにニューヨークダウが元の最高値を回復したのは1954年で、実に22年も後のことだったのだ。

 もちろん、まったく同じことが起きるとは言えないが、似たようなことが起きる可能性はある。だから、私は外貨の資産を持っている中高年層は、売却するか、少なくとも一部を売って、利食いしたほうがよいと思う。…

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森永卓郎

経済アナリスト、独協大学教授

1957年生まれ。日本専売公社、経済企画庁、三和総合研究所(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング)などを経て独協大経済学部教授。専門はマクロ経済、計量経済、労働経済。コメンテーターとしてテレビ番組に多数出演。著書に「年収300万円時代を生き抜く経済学」(光文社)など。