「男性が稼ぎ主」を終わらせる ジェンダー・メインストリーミング

古賀伸明・元連合会長
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すべての女性が輝く社会づくり本部・男女共同参画推進本部合同会議で発言する岸田文雄首相(右)。左は野田聖子男女共同参画担当相=首相官邸で2022年6月3日、竹内幹撮影
すべての女性が輝く社会づくり本部・男女共同参画推進本部合同会議で発言する岸田文雄首相(右)。左は野田聖子男女共同参画担当相=首相官邸で2022年6月3日、竹内幹撮影

 6月3日、政府は「女性版骨太の方針2022」というタイトルを併記し、「女性活躍・男女共同参画の重点方針」を決定した。岸田文雄首相が掲げる看板政策である「新しい資本主義」の中核との位置づけだ。

 日本のジェンダーギャップ指数の順位が156カ国中120位(世界経済フォーラム、2021年3月発表)という状況から脱却するには、政府がこの重点方針を各政策に反映し、確実に実行できるかどうかにかかっている。

男女の賃金格差が大きい日本

 特徴的なのは、男女間の賃金格差の開示を、従業員300人超の企業と、国と自治体に義務づけることを打ち出したことだ。女性活躍推進法の省令を改正し、7月に施行する。正規と非正規雇用に分けた開示も求め、従業員100人超の企業については「施行後の状況を踏まえ、検討を行う」とした。

 経済協力開発機構(OECD)によると、日本の女性の賃金は中央値でみて男性の77.5%にとどまる。OECD平均の88.4%と大きな差があり、主要7カ国で最下位だ。また、男女の賃金格差が大きい国ほど労働生産性は低く、女性が能力開発できず、格差が生じる環境を放置することが経済成長を損ねる恐れがあると指摘する。

 世界銀行は3月1日、190カ国・地域の経済的な権利を巡る最新の男女間格差調査を公表した。職業選択や賃金、育児、年金など8項目の評価の総合点で、日本は昨年の80位から103位タイに急降下。ちなみに2020年は74位である。

 女性の就業率は7割に達したものの、不安定で低賃金になりがちな非正規雇用の比率が54%と男性の22%にくらべ高い。また賃金が高い管理職に占める比率が低く、出産などでいったん退職した人は勤続年数が短く賃金が上がりづらいことなどが要因である。

 加えて、医師や弁護士など高収入の専門職に女性が少ないことも影響している。例えば、医師の女性の割合は21%と、OECD諸国では最低レベルだ。保育士など女性が9割を占める多くの職業は、年収が全平均を下回る。

コロナ禍でより深刻に

 このコロナ禍でも女性の雇用や労働条件はより深刻となった。この現象は国際的にも共通し、国連のグテレス事務総長は2020年4月「女性に対する暴力防止と経済的救済」を、新型コロナウイルス対策の重点項目とするよう声明を出した。女性の雇用悪化を表す言葉として、女性(She)と不況(recession)を合わせたシーセッションという造語も生まれた。

 消費活動の自粛で直撃を受けた「宿泊・飲食・小売業」は、女性が多く働いている対人サービスであり、しかも非正規雇用比率が高く契約解除やシフト減での実質的な失業に追いやられた可能性が高い。

 非正規雇用労働者の7割は女性であり、テレワークや外食減での家事負担、小中学校の休校等で育児負担が増加し、仕事か家庭かの二者択一を迫られ自ら就業を控える女性も増加した。…

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古賀伸明

元連合会長

1952年生まれ。松下電器産業(現パナソニック)労組中央執行委員長を経て、2002年電機連合中央執行委員長、05年連合事務局長。09年から15年まで第6代連合会長を務めた。現在は連合総研理事長。