希望の党票の受け皿になれなかった立憲と国民民主 参院選に向けて野党の現状と戦略を評価する

菅原琢・政治学者
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立憲民主党の代表を辞任し、記者会見する枝野幸男氏=東京都千代田区の衆院第2議員会館で2021年11月12日、竹内幹撮影
立憲民主党の代表を辞任し、記者会見する枝野幸男氏=東京都千代田区の衆院第2議員会館で2021年11月12日、竹内幹撮影

 野党各党は、その戦略や方針を巡る混乱を深めたまま参院選を迎えようとしている。

 前回記事で見たように、2021年衆院選での小選挙区における野党共闘は一定の成果を挙げ、共闘野党の獲得議席を増やすことに貢献したことは確かと言える。だが、野党第1党である立憲民主党の議席は減少し、21年衆院選は日本維新の会以外の野党が敗北した選挙と報じられた。

 その結果、立憲民主党も21年衆院選を敗北と捉え、その要因を共産党との協力関係に求めようとして紛糾するなど、選挙結果の評価にすら苦慮することになった。多くの1人区で野党候補が複数出馬し、与党への対抗軸を作ることに失敗したのは、立憲民主党の戦略の曖昧さ、煮え切らない態度に主因があると言えよう。

 <衆院選 共闘総括、あいまい 立憲、敗因記述修正>

 これに対し、衆院選で議席を増やした維新と国民民主党は、立憲民主党との差異を強調する独自路線を強めた。

 衆院選直後は、この両党が互い接近する場面も見られた。しかし現在では、維新が与党と立憲民主党との対決姿勢を強め、野党第1党を目指す方針を採る一方、国民民主党は政府予算案に賛成するなど、与党に接近し野党色を薄める戦略に出た。

 これら野党各党の方針や戦略は、どのような事情があるにせよ、賢明とは言いにくい。参院選も衆院選と同様に選挙区を中心とする制度であり、小選挙区(1人区)の結果が全体の趨勢を決める傾向にある。1人区でバラバラに戦っていては強力な与党に対抗できず、各党の発言力(議席数)は余計に低下することになるだろう。

実力以上に膨れ上がっていた立憲の議席

 冒頭で述べたように、21年衆院選において立憲民主党は大きく議席を減らしたと報じられている。データを読む際の基本だが、ここで注意したいのは何に比較しての増減なのかである。

 多くの場合、マスメディアが報じた議席“減”は、公示直前の議席を比較対象としている。具体的な数字を挙げると公示前の立憲民主党は109議席を有していたが、衆院選で獲得したのは96議席にとどまったことを指している(表1)。

 なお、立憲民主党の小選挙区での議席は公示前の48議席から57議席へと増えている。つまり、2021年衆院選の立憲民主党の議席“減”は、公示前の61議席から39議席へと減らした比例代表で生じたものである。したがって、2021年衆院選で立憲民主党が敗北したという印象は、小選挙区ではなく比例代表が作り出したものと言える。

 競争の構図により結果が大きく変わる小選挙区と異なり、比例代表の結果はその党への支持を素直に反映したものとみなせる。ただし、立憲民主党の比例代表獲得議席の“減少”は、同党への支持率の“低下”を示すものではない。比較対象となっている公示前議席数は、立憲民主党が実力で獲得したものではないからである。

 2017年衆院選直前に結成された立憲民主党は、2021年衆院選に至る4年の間にその議席数を膨張させた。2017年衆院選に希望の党で当選した議員を吸収したためである。2017年衆院選の比例代表では、旧立憲民主党が37議席を獲得する一方、希望の党は32議席を獲得していた。希望の党の多くの議員は国民民主党を経由して立憲民主党に合流し、一部が国民民主党に残ることになった。

 しかし、この膨れ上がった議席数を支えられる程度には立憲民主党の支持率は上がらず、得票率も伸びなかった。その結果が、公示前に比較しての比例代表の議席“減”なのである。

 したがって、立憲民主党の公示前に比較しての比例代表の議席減が示す敗北の意味は、「支持率の低下」ではない。大政党化に見合うだけの支持率と得票率の向上を生み出せなかったという、支持拡大戦略の失敗である。別の言い方をすれば、立憲民主党は支持を低下させる以前に十分な支持を得ていなかった、ということになる。

 そして無論、この失敗にもかかわらず小選挙区で立憲民主党が議席を伸ばせたのは、野党共闘のおかげである。立憲民主党の支持拡大戦略の失敗を共産党が救った形である。

希望の党票を吸収できなかった旧民進党系野党

 政治家主導の大政党化で支持や票が自動的に「ついてくる」と当事者が考えていたとすれば、見通しが甘いと言わざるを得ない。ここでカギとなってくるのは旧希望の党の票の行方である。ここで「ついてこなかった」のは同党に投じられた票と考えられるからである。選挙区ごとの比例代表得票率の変動から、この点を確認してみたい。

 まず、旧民進党系野党の前回と今回の得票率を比較してみる。図1は2017年の立憲民主党と2021年の立憲民主党の選挙区別比例代表得票率を示した散布図である。これを見ると、おおむね前回と今回とで同じような得票傾向となっていると見受けられる。ただし、選挙区によっては新党が旧党を大きく上回るところもあれば下回るところもあり、ややバラついているようにも見える。

 図2では、2017年の希望の党と2021年の国民民主党の得票率を比較している。両者の相関は弱く、y=xの下方に大部分の選挙区が分布しており、国民民主党は希望の党の受け皿には全くなっていないことがわかる。

 このように個別に見ると選挙区ごとの増減の傾向は幾分バラけている。しかし、旧民進党系野党として合算して比較すると、立憲民主、国民民主両党はおおむね前回の立憲民主党、希望の党の得票傾向を踏襲していることがわかる(図3)。実際、二つの指標の間の相関の強さを示す相関係数は、0.864と前2図に比較して高い。

 また、全ての選挙区がy=xの右下に分布していることから、今回選挙の比例代表得票率はどこの選挙区でも前回に及ばず、票が流出していることもわかる。立憲民主党は旧党の得票率を維持していることから、主に希望の党の票が他党に流出したと想定される。

旧民進党系野党票は日本維新…

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菅原琢

政治学者

1976年生まれ。東京大学先端科学技術研究センター准教授など歴任。専門は政治過程論。著書に「世論の曲解」、「データ分析読解の技術」、「平成史【完全版】」(共著)、「日本は「右傾化」したのか」(共著)など。戦後の衆参両院議員の国会での活動履歴や発言を一覧にしたウェブサイト「国会議員白書」https://kokkai.sugawarataku.net/を運営。