アフリカン・ライフ

コロナとダイヤモンド ワクチン接種優等生の国のなぜ

平野光芳・ヨハネスブルク支局長
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追加接種のため接種会場を訪れた18歳の男性=ボツワナの首都ハボローネで2022年6月7日、平野光芳撮影
追加接種のため接種会場を訪れた18歳の男性=ボツワナの首都ハボローネで2022年6月7日、平野光芳撮影

 新型コロナウイルスワクチンの接種率がアフリカでトップクラスのボツワナ。インタビューを約束していた同国保健省の担当者、オラティレ・ムフォケンセレイさんは新型コロナに感染してしまい急きょ会えなくなった。ただ症状は軽く済んだといい、後日、オンラインで取材に応じてくれた。

 ムフォケンセレイさんはまず「コロナ対策への政府の政治的関心・関与がとても強い」ことを理由に挙げた。マシシ大統領が主導し「できることはなんでもやる」という強い姿勢で臨んだという。ワクチンの入手・使用のめどが立たない段階から、全国民向けの接種計画を立案し、準備を始めたというのだ。

 ワクチン入手でも世界保健機関(WHO)などが主導するワクチン配布の仕組み「COVAX(コバックス)」だけでなく、製薬会社との直接交渉も実施。比較的早期にワクチンを確保できた。

 接種キャンペーンではワクチンに対する誤った情報や忌避への対策がカギを握る。ここでボツワナ政府が重視したのはコミュニティーごとのキャンペーンだという。地域の有力者や著名人を「接種リーダー」に任命し、ワクチンの効用を事あるごとにPRしてもらった。ネット交流サービス(SNS)や各種イベントでもワクチン接種を呼びかけた。

 ただ接種をためらう人も残る。「接種しない理由を調査し、対策を立てています。追加接種もペースが遅く、促していく必要があります」。ムフォケンセレイさんはそう話した。

エイズ対策でも成果

 ボツワナの公衆衛生体制は一朝一夕にできあがったものではない。特にエイズウイルス(HIV)対策の経験が大きい。ボツワナでは1990年代半ばにHIV感染が爆発的に広がり、現在でも全国民の15%ほどが感染している世界有数の流行国だ。ただエイズはもはや「死の病」ではない。抗HIV薬の内服治療を続ければ発症を抑えられるため、早期の発見・治療が重要だ。

 ハボローネ市内の公立診療所を訪れると、正面にはHIV対策専用の小屋があった。ここでは誰でも予約なし、無料でHIV検査が受けられる。感染が判明した場合はカウンセラーが相談に乗り、治療につなげる。検査を受けに来ていた金融アドバイザーのリンガニ・コンボニさん(38)は「自分の身を守るために年1回は検査している。健康を守るため当然」。市民の間で検査を受ける習慣が定着しているようだった。

 政府はHIV感染が判明した人をデータベースに登録し、全国の多くの医療機関で参照できるようにしている。2002年には周辺国に先駆けて抗HIV薬の無料処方を導入したほか、HIVの母子感染を大幅に減らすことにも成功。一連の取り組みは国際的にも評価されている。

豊富なダイヤモンド資源

 積極的な保健政策が取れるのは、ボツワナがアフリカの中では裕福だからでもある。1人当たりの国民総所得(GNI)は6640ドルとサハラ砂漠以南のアフリカ大陸部では最高水準で、南アフリカよりもやや高い。

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平野光芳

ヨハネスブルク支局長

2001年入社。大津支局、福井支局敦賀駐在、大阪社会部、ジャカルタ特派員、奈良支局などを経て20年からヨハネスブルク支局長。共著に「なぜ金正男は暗殺されたのか」