米国が日本から「手を引く」ことがあるのか 同盟を知らない日本人

小川和久・静岡県立大学特任教授 特定非営利活動法人・国際変動研究所理事長 軍事アナリスト
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米軍のミリー統合参謀本部議長=ブリュッセルの北大西洋条約機構(NATO)本部で2022年6月15日、AP
米軍のミリー統合参謀本部議長=ブリュッセルの北大西洋条約機構(NATO)本部で2022年6月15日、AP

 ロシアのウクライナ侵攻を受けて、岸田文雄首相は防衛力の抜本的強化を打ち出し、防衛費も大幅に増額される方向にある。内閣支持率も上昇し、防衛論議も活発化しているかに見える。

米国への不信感

 しかし、その一方で気になってならないことがある。日米同盟の信頼性について、「ウクライナに軍事力を投入しないような米国だから、いざというときに日本を見捨てるのではないか」といった不信感が顔をのぞかせることが多くなったことだ。

 むろん、同盟関係にある日本と、北大西洋条約機構(NATO)に加盟していないウクライナでは米国の姿勢に差が出るのは当然だが、それでも日本国民からは「米国をアテにできるのか」という声が聞こえてやまない。

 この姿勢は日本人のあなた任せの安全保障観に根ざしている。相応の防衛努力をした上で同盟関係の信頼性をアテにできるかどうかと言うのならよいが、同盟関係を結べば丸抱えで守ってもらえるかのように受け止めてしまうのだ。

米国にとって日本は死活的に重要

 米国にとって日本がどれほど重要な同盟国なのか。ここに、それを示す米国防総省高官の匿名論文がある。2011年4月6日、「2022年、緊縮時代の国防」というタイトルで専門誌「スモール・ウォーズ・ジャーナル」に公表されたもので筆者名はネオプトレモス(ギリシャ神話の戦士アキレウスと王女デイダメイアの息子)。

 論文は米国の国防費削減に関するもので、国防長官の演説の形をとって国防費の3分の1をカットし、陸軍士官学校や軍人恩給なども廃止するという衝撃的な内容を納税者に訴えている。その中に海外駐留米軍の撤退も含まれているのだが、見逃してはならないのは日本の根拠地機能だけは逆に強化し、日本から中国と対峙(たいじ)していくとしている点だ。

 ほとんどの日本国民が知らないことだが、日本は米国の数ある同盟国の中でも死活的に重要な位置づけにある。

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小川和久

静岡県立大学特任教授 特定非営利活動法人・国際変動研究所理事長 軍事アナリスト

 1945年生まれ。陸上自衛隊生徒教育隊・航空学校修了。同志社大学神学部中退。地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。外交・安全保障・危機管理(防災、テロ対策、重要インフラ防護など)の分野で政府の政策立案に関わり、国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、日本紛争予防センター理事、総務省消防庁消防審議会委員、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。小渕内閣ではドクター・ヘリ実現に中心的役割を果たした。電力、電話、金融など重要インフラ産業のセキュリティ(コンピュータ・ネットワーク)でもコンサルタントとして活動。2012年4月から、静岡県立大学特任教授として静岡県の危機管理体制の改善に取り組んでいる。『フテンマ戦記基地返還が迷走した本当の理由』『日米同盟のリアリズム』など著書多数。