オアシスのとんぼ

日韓の長い中断と深い認識ギャップ 尹政権は対日関係を改善できるか

澤田克己・論説委員
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日米韓首脳会談で発言する尹錫悦・韓国大統領=スペイン・マドリードで2022年6月29日、ロイター
日米韓首脳会談で発言する尹錫悦・韓国大統領=スペイン・マドリードで2022年6月29日、ロイター

 韓国で5月に発足した尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権が、日本との関係改善に強い意欲を見せている。ロシアによるウクライナ侵攻を受けた国際秩序の変動や核・ミサイル開発をやめようとしない北朝鮮の脅威を考えれば、日米韓の連携強化は必然だ。安全保障問題を重視する保守派でもあり、尹政権が対日政策を立て直そうと考えるのは自然だろう。

 一方で日本側は新政権への期待を抱きつつ、文在寅(ムン・ジェイン)前政権下で積み重なった不信感から依然として抜け出せていない。韓国新政権は現状をどう見ているのだろうか。6月上旬にソウルを訪れ、新政権の関係者らに話を聞いた。

尹氏は積極的

 「我々は韓日関係を積極的に改善しようと思っているのだが、日本側が様子見という感じでねえ」

 尹政権の外交政策全般にかかわる重鎮は開口一番、ため息をついた。ただ一方で、7月に参院選を控えていて動きづらいという事情は理解できると語り、「急ぎすぎると韓国内でも反発を呼ぶ可能性がある。ある程度、時間がかかるのは仕方ない」と淡々と続けた。

 まだ発表されていなかったが、スペイン・マドリードでの6月末の北大西洋条約機構(NATO)首脳会議への岸田文雄首相と尹氏の出席が取り沙汰されている時期だった。その場を利用して初の日韓首脳会談が開かれるのか、あるいはバイデン米大統領を交えた日米韓首脳会談が開かれるのかと注目されていた。

 だが彼はこの点について、「大統領は、岸田さんの都合に合わせればいい。日韓首脳会談をできればいいけれど、無理をする必要はないと言っている」と語った。

 対日政策に関係する韓国側の関係者が口をそろえるのは、日本との関係改善については尹氏がもっとも積極的だということだ。ある高官は「周囲がトーンダウンさせている」と苦笑した。本人の経歴として日本と強い接点を持つわけではないが、経済学者である父、尹起重(ユン・キジュン)延世大名誉教授の影響を挙げる関係者はいた。幼かった尹氏を連れて一橋大学に留学した経験を持つ父は、日本との経済協力の重要性を力説するのだという。

 日本側にも、政権交代を契機に行き詰まりを打破することへの期待感は出ている。尹氏は就任前に政策協議代表団を日米両国に派遣したが、この際に面会を打診された日本側関係者はみな応じた。日程の調整がつかなかったのは菅義偉前首相だけで、受け入れ準備をした日本政府当局者が「これほど詰まった日程表は見たことがない」と驚くほどだった。

依然残る認識ギャップ

 ただし、日本側の懸念が完全に共有されているわけではない。政策協議代表団のメンバーは、日本側との面会を重ねた感想として「日本が『現金化』を強く懸念していることが、よく分かった。ここまでとは思わなかった」と漏らしていた。

 「現金化」とは、元徴用工への賠償に充てるため日本…

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澤田克己

論説委員

1967年生まれ。埼玉県狭山市出身。91年入社。ソウル支局やジュネーブ支局で勤務した後、論説委員を経て2018年から外信部長。2020年4月から再び論説委員。著書に『「脱日」する韓国』、『韓国「反日」の真相』、『反日韓国という幻想』、『新版 北朝鮮入門』(共著)など。