政党間の違いを対立ではなく協力に生かすことが重要 参院選に向けて野党の現状と戦略を評価する

菅原琢・政治学者
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街頭演説の場に集まった聴衆=那覇市で2022年7月1日、喜屋武真之介撮影
街頭演説の場に集まった聴衆=那覇市で2022年7月1日、喜屋武真之介撮影

 昨年の衆院選では、立憲民主党と国民民主党の旧民進党系野党2党は、2017年衆院選で希望の党に投じられた票を吸収しきれず、その多くを日本維新の会に奪われたと想定される。こうした中で、立憲民主党の周辺や報道、評論の一部では、衆院選で「躍進」した維新の会に対抗し、より中道、あるいは「改革」を標榜(ひょうぼう)することで、維新の会に行った票を奪い返すべきだとの声も聞こえた。

 もっとも、政策方針や選挙戦略の安易な変更は、支持者や他党の離反を招くものであり、印象論によらず慎重に判断すべきものである。

 前回最後に示した図5では、21年衆院選で旧民進党系野党が減らした得票率と維新の会が伸ばした得票率は明確には相関していなかった。共闘野党の「敗北」と維新の「躍進」は印象ほどには1対1の関係ではないと捉えられる。少なくとも、維新か立憲かといった2択で人々の投票行動を想起することはできず、したがって改革を唱えれば票を「取り戻せる」という考え方も単純に過ぎると思われる。

 そこで今回は、なぜ旧民進党系野党から流出した得票率と維新の会が伸ばした得票率とが明確に相関しないのか、維新の得票の特徴の面から解説する。そのうえで、参院選も念頭に、野党各党の現状や戦略について簡単に論じておきたい。

特殊な近畿ブロックの傾向

 先の図5をもう一度確認すると、横軸と縦軸の数値に応じて広範に選挙区が分布し、ごく弱い相関関係しか認められないこと以外にも読み取れることがある。分布の密度に注意して見ると、多くは下部に集中している一方、上部にも一定数の選挙区が集まって下部から分離したような分布になっていることがわかる。

 この不思議な分布の正体は、近畿かそれ以外か、である。

 図6は、図5を近畿とそれ以外に色分けしたものである。近畿についてはさらに、大阪および兵庫とそれ以外に分けている。また、横軸、縦軸の値の平均的な関係を示す回帰直線をグループごとに描き入れている。この図からは、それぞれのグループ内では旧民進党系野党の得票率の減少と維新の会の得票率の増加が強めに相関していることがわかる。

 図6に示した分布は図5と同じだが、地域で分けると相関関係が明瞭になる。筆者の新著「データ分析読解の技術」(中公新書ラクレ)で解説したが、このように全体の傾向と、全体をいくつかのグループに分けた場合のグループ内で見られる傾向とがだいぶ異なることを、統計学の用語でシンプソンのパラドックスと呼ぶ。

 今回の場合、旧民進党系野党の得票率の変動と維新の会の得票率の変動は本来強く相関しているのだが、近畿ブロックの特異な傾向が混ざったために、全体では相関関…

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菅原琢

政治学者

1976年生まれ。東京大学先端科学技術研究センター准教授など歴任。専門は政治過程論。著書に「世論の曲解」、「データ分析読解の技術」、「平成史【完全版】」(共著)、「日本は「右傾化」したのか」(共著)など。戦後の衆参両院議員の国会での活動履歴や発言を一覧にしたウェブサイト「国会議員白書」https://kokkai.sugawarataku.net/を運営。