先制攻撃と借金で賄う防衛費が作る「空気」

藤井裕久・元財務相
藤井裕久氏=藤井太郎撮影
藤井裕久氏=藤井太郎撮影

 藤井氏は7月10日に逝去されました。インタビューは6月10日に行なったものです。(編集部)

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戦勝国でも敗戦国でも

 戦争は国家がやるように見えて、戦勝国でも敗戦国でも一番犠牲になるのは、国民だ。

 小学6年生の時に東京都東村山市(当時は東村山町)に学童疎開をしていた。近くに米軍の爆撃機のB29が墜落した。当時はいつも空腹だったので、なにか食べ物があるのではないかと思って見に行った。米兵が死んでいた。その時から戦勝国でも敗戦国でも犠牲になるのは一般国民だと思うようになった。

 学童疎開から東京・本郷の自宅に帰ったのはたまたま、3月10日(1945年)の東京大空襲の翌日だった。前日に東京のほうの夜空が真っ赤に染まったのを覚えている。親が迎えにくるのだが、誰も迎えに来ない人がいる。湯島切通坂に行ったら、逃げてきて、そこで息絶えている人がたくさんいた。4月13日の空襲では自宅の隣まで焼けた。父に「逃げよう」と言ったら「踏みとどまって火を消せ」と言われた。忘れられないことだ。

 田中角栄さんは「戦争を知っている人がいる限り日本は大丈夫だ」と言った。今、戦争を知る人が減っているのは仕方がないことだ。戦争を直接知っている政治家もほとんどいなくなった。だから戦争の悪を教えることがとても大切だ。

 ウクライナ侵攻があり国民が不安に思っている。こういう時だからこそ、政治家は国民に国際協調の大切さを理解してもらう努力をしなければならない。実際には防衛費にしても敵基地攻撃能力にしても逆にあおるような政治家がいる。残念だ。

軍事国家にな…

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元財務相

1932年生まれ。大蔵省を経て77年参院初当選。90年衆院初当選。細川内閣と羽田内閣で蔵相、鳩山内閣で財務相を務めた。参院当選2回、衆院当選7回。2012年に政界を引退した。