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日中、中韓ともにギクシャクする「記念日」事情

米村耕一・中国総局長
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日中国交正常化50年を記念して開かれた写真展=北京市内で2022年6月上旬、米村耕一撮影
日中国交正常化50年を記念して開かれた写真展=北京市内で2022年6月上旬、米村耕一撮影

 今年は日中国交正常化50年(9月)で、同時に中韓国交正常化30年(8月)だ。本来なら時期が近づき、そろそろ多少は祝賀ムードが出るところだが、日中はもちろんのこと、従来は比較的に関係が安定していた韓国と中国の関係もギクシャクしている。

 5月に就任した韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は、選挙期間中から米国との同盟を重視し、中国に対して「言うべきことは言う」姿勢を見せてきた。

韓国の「脱中国化」?

 尹氏は6月下旬、中国を「体制上の挑戦」と位置づける戦略概念を採択した北大西洋条約機構(NATO)首脳会議にも出席している。

 尹氏のNATO首脳会議出席に関連して、ソウル、そして北京で「脱中国宣言か」と話題になったのは、尹氏の経済参謀で、崔相穆(チェ・サンモク)大統領府経済首席秘書官の発言だ。

 聯合ニュースによると、崔氏はマドリードでの記者会見で「中国の成長は鈍化しているうえに、国内中心の経済戦略に転換しはじめている。過去20年のような対中輸出によって経済成長する時代の終わりは近い。中国を代替する市場が必要であり、市場を多角化しなくてはならない」と述べ、尹氏のNATO首脳会議出席で、欧州との連携を深める意義を強調した。

 韓国の輸出総額に占める対中輸出の比重は近年、継続して25%前後で、2003年に米国を上回って以来、圧倒的に1位だ。韓国経済の中国依存度は今も高く、韓国メディアからも「韓中関係を悪化させる」との批判の声が上がった。

 中国側も衝撃を受けたようだ。北京の外交関係者は「大統領選挙期間中の中国批判はともかく、選挙後もこうした声が政権中枢から出たことについては中国側も当惑したはずだ」と分析する。

 実際、7月1日の中国外務省の定例会見で崔氏の発言に関して質問が出ると、趙立堅副報道局長はその場での回答を避け、その日、遅くに外務省ホームページ上で「追加質問に答える」との形で対応した。

 趙氏はこのコメントで、昨年の中韓貿易額が前年比26・9%増と過去最高となり、中でも韓国側の貿易黒字が646.3億ドル(約8兆3000億円)に達していると指摘。「中韓の中央銀行は4000億元の通貨スワップ協定も締結している」とも付け加え、中国の韓国経済への貢献を強調した。

韓国も安保と経済は切り離せず

 ただ、そもそも韓国内の対中感情が悪化し、中韓関係が冷え込んだ最大の原因は、16年の米軍の最新鋭迎撃システム「終末高高度防衛(THAAD)ミサイル」の韓国配備決定に対し、中国側が事実上の「経済報復」を行ったことだ。

 李明博(イ・ミョンバク)政権時に大統領府で外交安保首席秘書官を務めた千英宇(チョン・ヨンウ)氏は、4月に出版した「大統領の外交安保アジェンダ-韓半島の運命を変える5大課題」の中で、THAAD問題を受けた中国の対応が「安全保障と経済を分離できないという事実を、立証した」と指摘。今後も中国リスクへの準備が必要であり、「貿易や供給網の分野で中国に対する依存度を低めなくてはならない」と強調している。

 外交官出身で保守論客でもある千氏は、対北朝鮮問題や韓国の国防戦略、厳しい米中関係の中での韓国の生存戦略を網羅したこの本を「大統領とその参謀に参考になればとの思いも持って書いた」という。崔氏の発言について、千氏に直接聞いてみたところ「中国がこれ以上、(韓国にとっての)黄金郷ではなく、競争相手であり、追撃者であるという認識を広める上で助けになった」と評価していた。

日中関係の行方は

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米村耕一

中国総局長

1998年入社。政治部、中国総局(北京)、ソウル支局長、外信部副部長などを経て、2020年6月から中国総局長。著書に「北朝鮮・絶対秘密文書 体制を脅かす『悪党』たち」。