外国人技能実習制度の抜本的見直しを

小宮山洋子・元厚生労働相、ジャーナリスト
  • 文字
  • 印刷
日本人とともにネギを収穫するベトナム人技能実習生=福岡県糸島市で2022年2月17日、今野悠貴撮影
日本人とともにネギを収穫するベトナム人技能実習生=福岡県糸島市で2022年2月17日、今野悠貴撮影

 建前としては途上国への技術移転を目的としながら、実際には安価な労働力として日本の人手不足を補う制度になっている外国人技能実習制度について、古川禎久法相は7月29日の閣議後会見で政府全体で本格的に見直す考えを表明しました。

 実習先で暴行やパワハラを受ける人権侵害が後を絶たないなどの問題点を挙げ、「制度の趣旨と運用実態が乖離(かいり)せず、整合することが必要だ」と強調しました。政府は年内にも関係閣僚会議の下に有識者会議を設け、具体的に制度改正を議論する方針です。外国人の就労拡大のため、2019年に新設した特定技能制度との一本化も含めて検討する見通しです。

 外国人の技能実習制度の前身であった外国人技能研修制度ができた時から、NHKの労働担当の解説委員として取材してきました。そのころから問題が指摘されていたので、是非、抜本的に見直してほしいと考えます。

 当初から、技能を研修しても母国には先進的機械がない、ほとんどが安い労働力として外国人労働を正面から認めない日本の政策の隠れみのになっているなどの問題が指摘されてきました。

 東京の町工場を取材しても、もう技能実習の外国人がいないと成り立たないと言っていました。それなのに、人として日本社会に受け入れる対応は不十分です。当時、「家族の帯同が認められないので家族と離れ離れになる。多額の借金をして日本に来ているのでつらいことや人権侵害があっても帰れない」といった声を聞きました。

 この制度の成り立ちを見ていきます。外国人技能実習制度は海外の現地法人などが社員教育として行っていた研修制度を原形として、1993年に制度化されました。私は90年に解説委員になり、当初から取材をし、解説を放送してきました。

 技能実習制度の目的は日本の技能、技術、知識を開発途上国に伝え、人づくりに貢献するという国際協力の推進でした。技能実習制度では外国人の技能実習生が日本で企業や個人事業主と雇用契約を結び、母国では習得が困難な技能等の習得・習熟を図ります。期間は最長5年で、技能などの習得は技能実習計画に基づいて行われます。

 受け入れる方式は二つの型があります。企業単独型では日本の企業等(実習実施者)が海外の現地法人、合弁企業の職員を受け入れて技能実習します。団体監理型は事業協同組合や商工会等の営利目的としない団体(監理団体)が技能実習生を受け入れ、傘下の企業等で技能実習をします。技能実習生は入国後、日本語教育や必要な知識の講習を受けた後、日本の企業等の雇用関係の下で、実践的な技能を習得することになっています。

 技能実習生の現状を見ていきます。2020年末現在の在留外国人は288万7116人(出入国在留管理庁調べ)で、日本の総人口、1億2622万7000人(20年10月1日現在)の2%弱を占めています。

 在留外国人の在留資格別構成比は1位の永住者28.0%に次いで、2位が技能実習生で13.1%です。外国人労働者数は、2020年10月末時点で172万4328人(厚生労働省調べ)と過去最高で10年間で約3倍になっています。

 技能実習は就労資格の中で一番多くなっています。技能実習生が働ける業種は農業、漁業、建設、食品製造、繊維・衣服、機械・金属、その他と大きく分けて7業種、82職種となっています(2021年3月現在)。多いのは1位がその他(塗装、溶接、ビルクリーニング、介護、宿泊など)で24.1%。2位が建設で20.8%、3位が食品製造で18.8%となっています。国籍は1位がベトナム、2位が中国、3位がフィリピンです。(外国人技能実習機構業務統計)

 問題となっているのは技能実習生の非正規滞在や失踪が増えていること、5年が終了すると別の資格を取得しないと引き続き仕事はできないこと、技能実習生が著しく低い賃金で長時間勤務を強いられていることが珍しくないこと、本国の送り出し機関が技能実習生からさまざまな名目で渡航費用やビザ取得費用をはるかに超える手数料を徴収していること、実習先が失踪しないように高額な保証金を預かり高額な違約金を設定する契約を締結していること、職場を移転することが難しいこと、などがあります。私が住んでいる長野県でも昨年、落雷が激しいのに仕事を継続させられた農業実習生が亡くなるという事故がありました。

 日本では外国人は原則として高度な専門技能を持っていないと働けない建前になっています。

 2019年4月から国内人材を確保することが困難な状況にある産業分野について、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れることを目的とする特定技能制度を盛り込んだ改正出入国管理法により在留資格「特定技能」の創設による受け入れが可能になりました。

 特定産業分野は介護、ビルクリーニング、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、建設、造船・船用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業です。条件を満たした受け入れ機関(特定技能所属機関)が受け入れ、通算で上限5年まで在留できることになっています。2023年までに34.5万人を上限に受け入れを想定しているということです。

この記事は有料記事です。

残り191文字(全文2315文字)

小宮山洋子

元厚生労働相、ジャーナリスト

 1948年生まれ。NHKアナウンサー・解説委員を経て、98年参院初当選。2003年衆院初当選。副厚生労働相、厚労相、少子化対策担当相などを歴任。13年に政界引退。