河野太郎デジタル相に必要な「剛腕」

八代尚宏・昭和女子大特命教授
河野太郎氏=東京都千代田区の自民党本部で2022年8月8日、竹内幹撮影
河野太郎氏=東京都千代田区の自民党本部で2022年8月8日、竹内幹撮影

新内閣の改革への本気度

 第2次岸田文雄改造内閣が発足した。9人もの新任閣僚を含み、派閥のバランスに配慮した一方で、官房長官など主要なポストは留任組でまかなう手堅い人事だ。問題は、このメンバーで、今後、全国規模の国政選挙に惑わされない「黄金の3年間」に向けた構造改革にどう対処するかである。

 カギとなるのは河野太郎デジタル相の活用だ。河野氏は、岸田首相と自民党の総裁選で争った最大のライバルであり、構造改革をもっとも強く唱えた対照的な立場であった。その当人をデジタルという分野横断的な規制改革を担当するポストに任命したことは、存分に腕を振るうことを期待したものだろう。

 行政事務のデジタル化を、単に法律の条文改正やペーパーレス化のような矮小(わいしょう)なものと見なすのは誤りだ。個々の紙ベースの資料をビッグデータの形に集合化し、オンライン上で分析することで、経済や社会活動をより詳細に把握できる。

 これまで各省庁が抱え込んでいたデータの政府内での体系的な利用が進む。その結果、行政の効率化に貢献できるだけでなく、プライバシーを厳重に保護する前提で、民間事業者による活用を促せば、新しいビジネス活動に結び付けられる。日本経済に求められている生産性向上の切り札となる可能性が大きい。

デジタル庁で行政改…

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昭和女子大特命教授

 1946年生まれ。経済企画庁、上智大教授、日本経済研究センター理事長、国際基督教大教授などを歴任。著書に「日本的雇用・セーフティーネットの規制改革」(日本経済新聞出版)「脱ポピュリズム国家」(同)「シルバー民主主義」(中公新書)など。