日韓関係悪化の責任は両国のリベラルにもある

朴裕河・韓国・世宗大教授
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朴裕河氏=宮本明登撮影
朴裕河氏=宮本明登撮影

 日韓間の歴史問題が先鋭化したこの30年間を振り返ってみると、実は国家間の対立を導いてきたのは、両国の左右対立であり、さらに言うとリベラル層の中での考え方の相違だったことに気づかされる。

 慰安婦問題について、学界で主流の見方を定着させるのに、日本の「良心的知識人」と呼ばれる人々も関わってきた。こうした構造を多くの人に知ってほしい。

8年の法廷闘争で得た二つの言葉

 私は著書「帝国の慰安婦」で元慰安婦の名誉を傷つけたとして2014年に訴えられた。このため、過去8年間、慰安婦問題に関する多数の文献を読んだ。元慰安婦を支援する運動や研究の在り方について考えるうちに、これまでの主流の議論を作ってきた人々は、旧日本軍の行為を戦争犯罪と位置付けることにこだわりすぎて無理を重ねたのではないか、と思うようになった。

 裁判は、どちらが正しいかについて争う勝ち負けだ。しかし、歴史認識を法廷で争うこと自体が間違いではないか。勝つためには、内容を誇張してしまいがちだからだ。裁判経験を通じて、「歴史の司法化」と「『法』至上主義」の状況が見えてきた。

 運動に関わってきた歴史学者や法学者は、学問の前に、「こうあるべきだ」という政治的立場や組織を守る思考に陥っていたのではないか。さらに元宗主国と元植民地という関係にとらわれすぎていたのではないか。これでは前進しないし、歴史に対しても不誠実だ。考え方が異なるだけで、右傾化したとか親日派(注・韓国では祖国を裏切った者を意味する)だとかいうレッテルをはってしまっている。対等の立場で歴史そのものに戻り、議論の接点を作ることが重要ではないかと思う。

慰安婦問題の二の舞いを避けるために

 徴用工問題は、慰安婦問題と比べると、18年に韓国大法院(最高裁)で判決が出るまで日韓両国で関心を持たれてこなかった。…

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朴裕河

韓国・世宗大教授

 1957年、韓国ソウル生まれ。慶応大卒、早稲田大大学院で日本文学を専攻、博士号を取得。主な著作に「反日ナショナリズムを超えて」(河出書房新社、日韓文化交流基金賞、のち「韓国ナショナリズムの起源」と改題し文庫化)、「和解のために――教科書・慰安婦・靖国・独島」(平凡社、大佛次郎論壇賞)、「帝国の慰安婦――植民地支配と記憶の闘い」(朝日新聞出版、アジア・太平洋賞特別賞、石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。