
中国共産党の習近平総書記(国家主席)がトップとしての任期を延長するとみられている今秋の第20回党大会が近づくにつれ、「いつまでやるつもりなのか」「事実上の定年制など慣例を崩して大丈夫なのか」といった疑問が頭を離れない。
この10年間に習氏への権力集中も進んだ。習氏は「権力の亡者」となり、独裁者になろうとしているのだろうか。最近、相次いで出版された習氏に関する書籍や専門家の見方を参考に、取材現場で見た習氏の姿も振り返りつつ改めて考えてみた。
中国で取材していても、習氏に質問するどころか、その姿を実際に見る機会すら極めて限られている。ただ、習氏がまだ国家副主席のころ、すぐ近くで一定時間、習氏の様子を眺め、その人となりの一端を感じたことはあった。
ドアの前に立ち続ける習氏
2011年7月4日、習氏は日本の松本剛明外相(当時)と北京の人民大会堂で会談することになっていた。会談場所の部屋には習氏のほか、私を含む日中双方の記者数人が先に入った。それほど広い部屋ではないので、私と習氏の距離は数メートルだったと思う。
午後3時過ぎ。松本氏の到着は何らかの事情で予定よりも大幅に遅れた。すると習氏は、会場に準備された椅子には座らず、松本氏が入ってくる予定のドアの前で立ったまま動かずに待った。それも10分単位の長い時間だったと記憶している。
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