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トランプ氏が持ち去り、破り捨てた公文書は誰のものか

西田進一郎・北米総局長
「マララーゴ」が家宅捜索を受けた2日後、トランプタワーを出発するトランプ前米大統領(中央)=ニューヨークで2022年8月10日、ロイター
「マララーゴ」が家宅捜索を受けた2日後、トランプタワーを出発するトランプ前米大統領(中央)=ニューヨークで2022年8月10日、ロイター

 情報公開や公文書管理の重要性を伝えるためによく引用される言葉がある。「人民が情報を持たず、またはそれを獲得する手段を持たないような人民政府は、喜劇か悲劇への序章、あるいはその双方かもしれない」

 今からちょうど200年前、「米合衆国憲法の父」と言われる第4代大統領のジェームズ・マディソンが書簡に記した一節だ。国民は自分たちの政府が何をしているのかを知らされるべきだと訴えている。その透明性や説明責任を確保するために重要なものが公文書ということになる。

前代未聞の家宅捜索

 米南部フロリダ州にあるトランプ前大統領の邸宅「マララーゴ」が、米連邦捜査局(FBI)の捜索対象となった。在任中の機密文書を大量に保管していたという。大統領経験者の邸宅に犯罪捜査の家宅捜索が入ったのは、米史上初めてだ。

 経緯をおさらいしておく。FBIは8月8日に「マララーゴ」を家宅捜索し、機密文書などを押収した。捜索令状によると、容疑は▽国防情報の収集や伝達、紛失(スパイ防止法違反)▽公文書の隠蔽(いんぺい)、持ち出し、破壊▽捜査に関わる文書の破棄、改ざんなど――の三つ。トランプ氏は「魔女狩りだ」などと反発し、捜査を差し止めるよう裁判所に申し立てるなど対抗措置をとっている。

 伏線は1月にあった。米国立公文書記録管理局(NARA)が「マララーゴ」から公文書などが入った段ボール15箱を回収した。これはトランプ氏側と協議した上でのことだった。ところが、箱の中身を精査したところ、700ページを超える機密文書が含まれていたという。NARAから連絡を受けた司法省やFBIは、他にも機密文書が残っているとみてトランプ氏側に提出を求めたものの、応じなかったため家宅捜索に踏み切ったということのよう…

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北米総局長

 1975年生まれ。97年に入社し、岡山、神戸などの支局や東京社会部を経て2005年から12年まで政治部。その後ワシントン特派員や政治部デスク、政治・安全保障担当の論説委員を経て22年4月から現職。