岐路に立つ共産党 「自衛隊活用論」の本気度

松竹伸幸・元共産党政策委員会安保外交部長
松竹伸幸氏=宮本明登撮影
松竹伸幸氏=宮本明登撮影

 共産党の志位和夫委員長が今年4月に「自衛隊活用論」に言及し、物議を醸した。主張自体は2000年からあるもので、私はこの活用論を巡って志位氏と対立し、06年に党本部職員を退職した。その私から見ても、今回の志位氏の言及は野党共闘による政権獲得に共産の本気度を示したものと受け止めている。

自衛隊活用論を巡る曲折

 共産は戦後の自衛隊発足以降、憲法第9条との間で揺れてきた。もともと共産の安全保障政策は旧社会党の「非武装中立」に対して「中立・自衛」だった。自衛隊は憲法違反だが、主権国家として自衛権を持つことは否定しないという考え方だ。自衛隊を解消したうえで新たな自衛措置を整備するための将来の憲法改正を視野に入れていた。(※)

 ところが1994年に9条堅持へと方針転換をした。旧ソ連の崩壊と旧社会党の非自民連立政権への参加という情勢変化の影響を受けたものだった。

 しかし国民の多数は旧ソ連崩壊によって「自衛措置は必要なくなった」という認識にはならなかった。共産もそのことを自覚して、00年に自衛隊解消までの過渡的な時期に日本が他国から侵略を受けた場合には自衛隊を活用するとの方針を打ち出す。

 私は当時、党政策委員会で外交・安全保障担当だった。活用論と憲法9条との矛盾を問われれば難しいことは分かっていたが、方向としては賛成だった。

 だから05年に党内の月刊誌に同趣旨の論文を掲載したのだが、これに志位氏が突如「間違いだ」と指摘し…

この記事は有料記事です。

残り1372文字(全文1983文字)

元共産党政策委員会安保外交部長

 1955年生まれ。一橋大在学中に全日本学生自治会総連合(全学連)委員長を務める。共産党本部職員、国会議員秘書などを歴任。党退職後はかもがわ出版編集長を経て、現在は編集主幹。柳澤協二元内閣官房副長官補が代表の「自衛隊を活かす会」事務局長。著書に「改憲的護憲論」(集英社新書)、「憲法九条の軍事戦略」(平凡社新書)など。