宗教2世当事者が語る「宗教被害」

横道誠・京都府立大准教授
旧統一教会の養子縁組を巡る問題のヒアリングで、オンラインで発言する元2世信者の小川さゆりさん(中央)と武田ショウコさん(左)=東京都千代田区で2022年11月16日、三浦研吾撮影
旧統一教会の養子縁組を巡る問題のヒアリングで、オンラインで発言する元2世信者の小川さゆりさん(中央)と武田ショウコさん(左)=東京都千代田区で2022年11月16日、三浦研吾撮影

 我々「宗教2世」と呼ばれる当事者は、「宗教被害」という言葉がもっと定着してほしいと思っている。

 宗教2世への支援は子どもの問題と、現在は脱会しているが、その後苦しんでいる私のような成人の問題と2種類ある。緊急性が高いのは現在苦しんでいる子どもの問題だ。

見えないところで

 現在、子どもである宗教2世の問題は、家族の問題だから行政が入っていきにくいという見方もあるだろう。しかし、これは児童虐待やヤングケアラーの問題と同じだ。

 「信教の自由」というが、漠然としすぎている。子どもの宗教をどうするかは親の「信教の自由」に含まれるとなんとなく思われている。これまでの伝統的な宗教では子どもの宗教は親が決めるというのが当たり前だったのかもしれない。しかし21世紀の日本の現代的な価値観としては、もはやそのような考え方は普通だとはいえない。だから宗教2世が社会問題化している。

 昔は近所全体で子どもを育てるという考え方があったが、核家族化が進み、「家のことに口出ししないでください」という社会になり、その結果として一部の家では誰からも見えないところで地獄が展開している。そこから考えていくべきだ。

 これは実現を期待するという意味ではなく、議論の呼び水としての提案だが、宗教については未成年は学校でフラットに知識を学ぶだけにして、入信は成人してから認めるようにする、いわば「R18」のものに…

この記事は有料記事です。

残り793文字(全文1382文字)

京都府立大准教授

 1979年生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科研究指導認定退学。文学博士(京都大学)。京都府立大学文学部欧米言語文化学科准教授(ドイツ言語文化)。専門は文学・当事者研究。自らも「宗教2世」で、宗教2世や発達障害など、自らに関わる多くの自助グループを主宰する。