「俺の遅さにつきあえ」 健常者に合わせなければならないのか

天畠大輔・参院議員
参院予算委員会で質問をするれいわ新選組の天畠大輔氏(手前から2人目)。手前は山本太郎代表=国会内で2022年10月20日、竹内幹撮影
参院予算委員会で質問をするれいわ新選組の天畠大輔氏(手前から2人目)。手前は山本太郎代表=国会内で2022年10月20日、竹内幹撮影

 

 発話障がいがある私は「あ、か、さ、た、な話法」(※)を使って国会で質疑している。

 準備した質問については、原稿を秘書が読み上げる代読をしているが、当初予定にない質問をする場合は、速記を止め(質疑時間を中断する)、その間に「あ、か、さ、た、な話法」で発言内容をまとめ、まとまったところで質疑時間を再開して秘書が代読している。

 「あ、か、さ、た、な話法」では、意思表明に健常者の発話より時間が必要になるための対応だ。

 「あ、か、さ、た、な話法」の時間を質疑時間に含めないことによって、形の上では質疑時間は確保されているが、私は「あ、か、さ、た、な話法」の時間もふくめて質疑時間とし、それに応じて質疑時間を延長するよう求めている。

切り捨てられる怖さ

 なぜ質疑時間の延長にこだわるのか。「わざわざ『あ、か、さ、た、な話法』によるコミュニケーションに時間を使うよりも、事前に原稿をつくりこんで、秘書が代読すればいいのではないか」という意見があることも十分認識している。

 しかし、私はそれでいいのか、と問いたい。

 これは優生思想を認めないという私の活動にもつながっている。障がい者は、健常者の基準に合わせられないことで社会から切り捨てられる怖さを日々感じている。

 障がい者運動をけん引してきた発話困難な重度身体障がい者の言葉に、「俺の遅さにつきあえ」という言葉がある。「健常者のスピードに合わせられない人は社会のお荷物だ」という価値観に対して、過去の障がい者はこうして対抗してきた。

 国会議員である私が健常者の基準に合わせてしまったら、社会から切り捨てられる怖さに日々直面する人たちを代弁できない。

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参院議員

 1981年生まれ。14歳の時、医療ミスにより、四肢まひ・発話障がい・視覚障がい・嚥下(えんげ)障がいを負い、重度の障がい者となり車椅子生活となる。ルーテル学院大学を経て、立命館大学大学院先端総合学術研究科先端総合学術専攻一貫制博士課程修了、2019年3月博士号取得。中央大学社会科学研究所客員研究員。一般社団法人わをん代表理事として重度障がい者の長編インタビューサイト「当事者の語りプロジェクト」運営。22年参院選で初当選。参院比例代表、当選1回。れいわ新選組。