旧統一教会問題 問われるメディアの宗教認識

奥西極・中外日報社記者
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が(左から)2000年頃に3000万円で信者に購入させた聖本、2004年頃に430万円で購入させた天聖経、2010年頃に430万円で信者に購入させた「天福函」=東京都千代田区で2022年7月22日、幾島健太郎撮影
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が(左から)2000年頃に3000万円で信者に購入させた聖本、2004年頃に430万円で購入させた天聖経、2010年頃に430万円で信者に購入させた「天福函」=東京都千代田区で2022年7月22日、幾島健太郎撮影

 宗教文化専門紙である中外日報(※)は、安倍晋三元首相銃撃事件以降、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)を巡る問題を報道してきた。その過程で実感したのは、宗教や信仰に対する日本のメディアの認識の薄さだ。そのことが社会に「カルト」が生まれる要因の一つになっているのではないか。

 旧統一教会は社会的に問題のある宗教であり、「統一教会と政治家」の関係の背景に政教分離や政治権力と宗教の関わりがあることは確かだが、それは2次的な問題だ。重要なのは政治家が反社会性を持つ団体と関係したことから派生した問題ということであり、今回の場合はその団体が宗教だったという理解だ。

 ただ旧統一教会の2世信者、多額の寄付など宗教全体に関わる問題もある。宗教界もオウム真理教の事件の時と同様に直視しなければならない。

 旧統一教会の被害者救済法を巡って「マインドコントロール」という言葉が与野党の議論で焦点になった。我々はこの言葉を紙面では必ずカギカッコ付きで表記する。発言者のこの言葉に対する理解がバラバラで、曖昧なまま用いられているためだ。

 社会全体に共通した理解がない状態でこの言葉が飛び交い、政教分離の問題や宗教法人に対する非課税の問題と絡めて宗教批判に使われることに危惧を感じている。

宗教全体に向けられた厳しい目

 我々は取材活動で宗教者と接する機会が多く、さまざまな質問を受ける。彼らは旧統一教会問題をきっかけに宗教全体に対する社会の目が厳しくなっていると感じている。特に寄付に対してどのような影響が及ぶのかを注視している。

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中外日報社記者

 1997年生まれ。東洋大卒。東京支社で曹洞宗などを担当。現在は旧統一教会問題を取材。