高齢者医療をどう合理化するか 改革の視点欠く全世代社会保障

八代尚宏・昭和女子大特命教授
全世代型社会保障構築本部の会合で発言する岸田文雄首相=首相官邸で2022年11月24日、竹内幹撮影
全世代型社会保障構築本部の会合で発言する岸田文雄首相=首相官邸で2022年11月24日、竹内幹撮影

 政府の全世代型社会保障構築会議の報告書案が公表された。予想以上のスピードで進む少子化や高齢者の増加の下で、今後の社会保障の基本原則を示すことが目的だ。しかし、その内容は、相変わらず、安易な給付の増加に偏っており、多くの問題を抱えた現行の「制度の改革」という視点に乏しい。

 高齢者に偏った社会保障制度を、子育て支援にも重点を置いたものにするという視点は大事だ。しかし、そのために、既存の高齢者医療をどう合理化するかという、スクラップ・アンド・ビルドの発想はほとんどみられない。

借金に依存した社会保障

 日本の社会保障費のうち、主たる財源である社会保険料で賄われているのは6割弱に過ぎない。高齢化で持続的に増える社会保障費に対して、賃金に比例した社会保険料は長年にわたって停滞しており、その差額は、もっぱら赤字国債で調達されている。

 この「借金に依存した社会保障」の現状にもかかわらず、財政の健全化に無関心な政権のままでは、いずれ日本国債の評価の低下は避けられない。頼みの日本銀行も債務超過に近づいている現状で、仮に国債で十分な資金が調達できなくなれば、社会保障給付が大幅に削減されることになりかねない。

 社会保障費のうち、年金の比率がもっとも大きいが、今後の増加分では、医療・介護が大部分を占める。政府は高齢者医療費の自己負担分や後期高齢者医療保険料の負担増で対応している。しかし、現状の高齢者医療の供給面の合理化への努力は、どこまで進んでいるのだろうか。

フリーアクセスという無秩序

 日本の患者は、保険証があればどの診療所でも行け、所定の費用を払えば特定機能病院でも自由に診療を受けることができる。しかし、これは患者が自分の病気を勝手に判断して診療科を選ぶという無秩序な状況だ。結果的に医療機関をたらい回しになり、無駄な診療・検査・投薬を受けることになりやすい。また、適切な治療が遅れるなど、患者自身の負担も大きい。

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昭和女子大特命教授

 1946年生まれ。経済企画庁、上智大教授、日本経済研究センター理事長、国際基督教大教授などを歴任。著書に「日本的雇用・セーフティーネットの規制改革」(日本経済新聞出版)「脱ポピュリズム国家」(同)「シルバー民主主義」(中公新書)など。