「韓国語」の浸透恐れる 北朝鮮に影を落とす脅威

坂井隆・北朝鮮問題研究家
朝鮮労働党中央委員会第8期第11回政治局会議に参加する金正恩総書記=平壌・党中央委員会本部庁舎で2022年11月30日、朝鮮中央通信・朝鮮通信
朝鮮労働党中央委員会第8期第11回政治局会議に参加する金正恩総書記=平壌・党中央委員会本部庁舎で2022年11月30日、朝鮮中央通信・朝鮮通信

 北朝鮮は今年、過去最多の弾道ミサイルを発射するなど軍事的な活動を活発化させ、「北朝鮮の脅威」に注目が集まっている。しかし、その背景には北朝鮮指導部にとって韓国からの「脅威」への対応が切実な課題となっている事情もある。

韓国語の影響を懸念

 北朝鮮では来年1月17日に開催予定の最高人民会議で「平壌文化語保護法」の制定が予定されている。「平壌文化語」とは、北朝鮮の標準語のことだ。何から保護するのかといえば、これまでの経緯(※)から判断すると、韓国語の影響を懸念しているとみられる。

 北朝鮮では、2020年12月、韓国製の映画、図書の流布・視聴などに厳罰(最高刑は死刑)を科すのみならず、「南朝鮮式」に話したり、書いたりすることや歌うなどの行為に対しても2年以下の懲役刑などを科す「反動思想文化排撃法」が制定されている。

 それに加えて、言葉の「保護」に特化した法律を新たに制定するということは、言葉遣いという最も基礎的な部分においてさえ、韓国文化の浸透に歯止めがかからないことを示している。

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北朝鮮問題研究家

1951年生まれ。78年公安調査庁入庁、北朝鮮関係の情報分析などに従事、本庁調査第二部長を最後に2012年退官。その後も朝鮮人民軍内部資料の分析など北朝鮮研究を継続。共編著書に「独裁国家・北朝鮮の実像」(2017年、朝日新聞出版)、「資料 北朝鮮研究Ⅰ 政治・思想」(1998年、慶応義塾大学出版会)など