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波紋広げた元外交官の証言 拉致問題解決の難しさを考える

大貫智子・政治部記者
3日目の日朝外務省局長級協議を終え、記者団の質問に答える北朝鮮の宋日昊・朝日国交正常化交渉担当大使=2014年5月28日、ストックホルム(共同)
3日目の日朝外務省局長級協議を終え、記者団の質問に答える北朝鮮の宋日昊・朝日国交正常化交渉担当大使=2014年5月28日、ストックホルム(共同)

 2022年9月、関係者の間で注目を集めたインタビュー記事があった。朝日新聞デジタルに掲載された斎木昭隆元外務事務次官の拉致問題に関する証言だった。

 14年、日朝両政府は日本人拉致被害者に関する再調査や日本による独自制裁の一部解除などで合意した(ストックホルム合意)。北朝鮮は拉致被害者の再調査のための特別調査委員会を設置したが、16年に北朝鮮が核・ミサイル実験を相次いで実施し、日本が独自制裁を発動すると北朝鮮は調査委を解体した。これまで、調査結果が公表されたことはない。

 ところが斎木氏はインタビューで、実は北朝鮮側から拉致被害者2人に関する生存情報が伝えられていたと明らかにしたのだ。報道ベースではよく知られた話だったものの、元政府高官が認めたのは初めてである。

 関係者の間では、斎木氏が証言したことに驚きの声が上がった。…

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政治部記者

2000年入社。前橋支局、政治部、外信部を経て13~18年ソウル特派員。12年と16年に訪朝し、元山や咸興など地方も取材した。日韓夫婦の物語「帰らざる河ー海峡の画家イ・ジュンソプとその愛」で小学館ノンフィクション大賞。