「育休なめるな」 普通の人の生活が見えていない岸田首相

常見陽平・千葉商科大学准教授
岸田文雄首相=首相官邸で2023年2月14日、竹内幹撮影
岸田文雄首相=首相官邸で2023年2月14日、竹内幹撮影

 岸田文雄首相が、産休・育休中のリスキリング(学び直し)を後押しすると国会で答弁した。

 「育児を、育休をなめるな」というのが率直な感想だ。子どもはいつ何が起こるかわからない。私は家事、育児をフルに担っていた時期がある。娘も5歳になり、だいぶ大きくなったが、風邪を引いたり、熱を出したりいろいろなことがある。体調だけではなく子どもはいろいろな面でとても壊れやすいものだ。

 首相は育児が大変だということ自体、理解していない。男性の育休取得は首相の言う「異次元の少子化対策」の中心的な課題の一つのはずだ。その前提には、母親が一人で子育てを担うことの問題や産後うつの問題など、育児の過重な負担があったことを忘れてしまったのだろうか。

 一方で学び直しに対しても「なめて」いる。学び直しには幅広い意味がある。どのレベルを想定してこのような発言をしたのか。育児も学び直しも遊びではない。

生産性のた…

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千葉商科大学准教授

 一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了(社会学修士)。リクルート、バンダイ、ベンチャー企業、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師、20年から准教授。専攻は労働社会学。「僕たちは育児のモヤモヤをもっと語っていいと思う」(自由国民社)、「なぜ、残業はなくならないのか」(祥伝社新書)、「僕たちはガンダムのジムである」(日本経済新聞社)、「『就活』と日本社会」(NHK出版)など。