政策の失敗を覆い隠す「高齢者バッシング」

本田由紀・東京大学大学院教授
本田由紀氏=和田大典撮影
本田由紀氏=和田大典撮影

 少子高齢化の進行で年金、介護、医療など社会保障費の負担が重くなっているなか、若者と高齢者の対立をあおる風潮がある。

 どう考えるべきか、教育社会学者の本田由紀・東京大学大学院教授に聞いた。

 ◇ ◇

 ――高齢者を標的にするのは問題のすり替えではありませんか。

 本田氏 日本の年金制度が十分でなく持続的でも健全でもないことは事実だ。若者の「自分たちは年金がもらえなくなる」という不満や不安は根拠がある。

 しかし、その不満のぶつけ先が高齢者になるのは大きな間違いだ。若者の不安につけこんで、意図的におかしなことを言って、あおる人たちがいる。

 ここに至るまでの政策の問題をすべて飛ばして、現在の人口構造だけをクローズアップして高齢者を狙い撃ちにする。高齢者がいるから、自分たちの生活が苦しい、日本社会がダメになっているというような、非常に短絡的で残酷なことを言う、いわゆる「インフルエンサー」たちがいる。

 問題は制度の作り方だ。高齢者を害悪と決めつけて解決する問題では全くない。

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東京大学大学院教授

 1964年生まれ。東京大大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。博士(教育学)。専門は教育社会学。『「日本」ってどんな国?――国際比較データで社会が見えてくる』『教育は何を評価してきたのか』など著書多数。