「プーチンの戦争」の背後にあるテロリズムと悪魔払い

大澤真幸・社会学者
並んで歩くロシアのウラジーミル・プーチン大統領(右)とロシア正教会のキリル総主教=モスクワで2018年11月4日、AP
並んで歩くロシアのウラジーミル・プーチン大統領(右)とロシア正教会のキリル総主教=モスクワで2018年11月4日、AP

 毎日新聞の2021年1月のインタビューで、コロナ禍は何世代かあとに地球レベルの共同体「世界共和国」に移行するきっかけになると指摘したが、そのあと予期せぬ世界史的出来事が起こった。22年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻だ。

 ウクライナ戦争が「いい道だ」とは到底言えないが、これを機会に世界を変えることはできる。

資本主義の矛盾

 ロシアは侵攻の理由について、ウクライナ国内のネオナチによるロシア系住民の虐殺を阻止するためだと言ったり、北大西洋条約機構(NATO)の(東方拡大による)脅威と言ったりしている。しかしそれは言い訳だ。

 この戦争の本質に近いものは「原理主義者」などと呼ばれる宗教的な過激派組織によるテロだ。

 ロシアが「非ナチ化」と同じくらい頻繁に使っているのは「悪魔払い」などの宗教用語だ。ウクライナは西側の悪魔にとりつかれ…

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社会学者

 1958年生まれ。東京大大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。社会学博士。京都大大学院教授などを歴任。著書に「ナショナリズムの由来」(毎日出版文化賞受賞)「自由という牢獄」(河合隼雄学芸賞受賞)など。個人思想誌「THINKING『O』」を刊行中。