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ウクライナで感じた希望と不安 変革の契機と「父の遺影」

宮川裕章・欧州総局長
ロシア軍と戦い亡くなったウクライナ兵士の遺影が並ぶ壁で、父親の写真を見つけた男の子=キーウで2023年2月8日、宮川裕章撮影
ロシア軍と戦い亡くなったウクライナ兵士の遺影が並ぶ壁で、父親の写真を見つけた男の子=キーウで2023年2月8日、宮川裕章撮影

 広場には、破壊されたロシア軍の戦車が野ざらし状態で展示されていた。その前で記念写真を撮る人たち。公園のベンチでは、お年寄りたちが和やかに語り合っている。

 ロシアによる侵攻開始から1年を前に訪れたウクライナの首都キーウ(キエフ)は、一見、平穏な日常を取り戻したかのように見えた。だが市内にある「思い出の壁」に飾られる戦死者の写真は、日ごとに増えた。

 家族の遺影に花を手向ける女性。東部の激戦地では日々、若い兵士の命が奪われている。

結束する国民の底力

 日常と戦争の非日常が入り交じるウクライナ各地を取材し、強く感じたのは、逆境に立ち向かう人たちの強さだった。

 南部ヘルソン州プラブディネ村。ロシア軍は占拠した地域からの撤退時、大量の地雷を敷設した。ウクライナ国家緊急サービス地雷除去部隊のロマン・シュティロさん(43)は、地雷原に部下2人と入り、地雷を一つ一つ爆破する作業を続けていた。シュティロさんの願いは「孫の、その孫の世代まで、子供たちが地雷におびえることなく、国土を自由に歩けるようにすること」。日本では当たり前のように享受できる自由が、そこにはない。シュティロさんは昨秋以降、3人の同僚を失っている。

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欧州総局長

1997年入社。さいたま支局、東京本社社会部、外信部、パリ特派員、経済部、外信部デスクを経て2022年4月から欧州総局長。著書に『フランス現代史 隠された記憶』(ちくま新書)、共著に『独仏「原発」二つの選択』(筑摩選書)、『世界少子化考 子供が増えれば幸せなのか』(毎日新聞出版)など。