男性の疲労困憊と異常な長時間労働 「少子化対策」の前にやるべきこと

吉田千鶴・関東学院大学経済学部教授
記者団の質問に答える岸田文雄首相=首相官邸で2023年5月15日、竹内幹撮影
記者団の質問に答える岸田文雄首相=首相官邸で2023年5月15日、竹内幹撮影

 「子どもを増やすにはどうしたらいいか」ばかり考えすぎではないか……。

 家族の経済学が専門の吉田千鶴関東学院大学教授は、子育て以前に、異常な長時間労働をしなければ生活できない状況が人を不幸せにしていると言う。

 長時間労働をしながら子育てをすることは、男性にも女性にも無理なこと、という吉田氏に聞いた。【聞き手・須藤孝】

 ◇ ◇ ◇

 ――政府の「異次元の少子化対策」をどう見ましたか。

 吉田氏 項目としては必要なものはほぼ網羅しているとは思います。

 ただ、「少子化対策のためにこれをやる」「子どものいる家庭のためにこれをやる」という個別の対策だけではなく、働き方対策が必要です。

 幸せの形は人それぞれです。「男性がしっかり働いて女性が家庭を見る」という形もあります。

 しかし、カップルが2人で働きたいと考えた時に、なにが子どもを持つことの妨げになっているか。

 結局は長時間労働です。政府は残業時間の上限規制や時間外労働の賃金の割増率の引き上げなど、長時間労働の適正化に取り組んでいます。

 少子化対策の観点からも、もっと踏み込んでメッセージを出していいのではないでしょうか。

家事・育児だけ変えるのは無理

 ――長時間労働が子育てに影響しています。

 ◆2人で働かないと生活ができないカップルがいる現実があります。

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関東学院大学経済学部教授

 シカゴ大修士(社会科学)。慶応大大学院博士課程単位取得退学。専門は家族の経済学。