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「楽譜は右から読む」 三つの言葉から探る阪哲朗の音楽哲学
2023/4/29 09:00 3571文字「どんな演目をやるかはどうでもいい」 「楽譜は右から読む」 「世界のスタンダードを目指す」 びわ湖ホール(大津市)の第3代芸術監督に4月1日付で就任した阪哲朗(ばんてつろう)はインタビュー中、印象的なせりふを三つ発した。 新型コロナウイルス禍が始まったばかりの2020年3月にワーグナーの大作オペラ
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「異物装着ピアノ」が歌い出す 音楽の哲人、北村朋幹の流儀
2022/8/28 13:00 3867文字「哲学的英知をそなえた音楽家」と評される若手ピアニストがいる。愛知出身の31歳で現在はドイツを拠点に活躍する北村朋幹(ともき)。 その北村が10月に大阪と滋賀の計3会場で、20世紀以降に発表された「現代音楽」を中心に据えた演奏会を開く。ジョン・ケージ(1912~92年)の名作「プリペアド・ピアノの
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あなたの4拍子は大丈夫? 古澤巖と解き明かす音楽の「謎」
2022/5/14 18:00 4438文字「名器ストラディバリウスが、うんともすんとも鳴らない」「4拍子の1拍目を、ずっと間違えていた」「歌を先導するのは旋律楽器ではない」……。ヴァイオリニスト古澤巖の口から、刺激的なフレーズが次々と飛び出した。古澤といえば、葉加瀬太郎や雅楽の東儀秀樹らとの共演、テレビのコマーシャルやドラマ出演などを通じ
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沼尻竜典、びわ湖ホール「バイロイト10演目」23年3月完結へ
2022/1/26 11:30 2125文字びわ湖ホール(大津市)が芸術監督の沼尻竜典とともに手掛けるワーグナー作品の上演が、2023年3月に予定する「ニュルンベルクのマイスタージンガー」で10演目に達する。ワーグナーの聖地と呼ばれるバイロイト祝祭劇場(ドイツ)で取り上げられる主要作品をコンプリートする快挙だ。9演目めの「パルジファル」上演
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和製オペラで「2人目のかぐや姫」登場 ソプラノ・幸田浩子が導く世界
2022/1/19 08:30 2088文字むかし話を素材に沼尻竜典が台本から作曲までを手掛けた「歌劇 竹取物語」が、21世紀の和製オペラとしては異例の延べ4会場目の公演に突入する。構想段階で主役に想定され、初演からかぐや姫を1人で歌い続けてきたソプラノ、幸田浩子にとっても思い入れの強い作品。しかし22、23日のびわ湖ホールでの再演では、1
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忙しすぎる音楽家・鈴木優人「通奏低音はバッハ」
2021/11/19 05:30 2376文字鈴木優人(まさと)は日本のクラシック界で有数の多忙な音楽家だ。オリジナル楽器の世界的な演奏団体バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)の首席指揮者でありチェンバロやオルガンも演奏する。レパートリーの幅はバロックから現代まで5世紀に及び、作曲家や舞台演出家、プロデューサーの顔も併せ持つ。そんな鈴木が関
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世界のディーバ・中村恵理 「プッチーニ愛」を語る
2021/9/28 09:00 4200文字世界の劇場で活躍するソプラノ中村恵理が10月、びわ湖ホール(大津市)でプッチーニ(1858~1924年)後期の名作「つばめ」の主役マグダを演じる。「蝶々夫人」の13年後に初演されたが、母国イタリアで不評が続き、1世紀を経た現代も上演機会が極めて少ない不遇のオペラ。「プッチーニが大好き」という中村が
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「ピアソラはジャンル」 硬派弦楽アンサンブル「石田組」組長語る
2021/6/27 08:30 2845文字2021年は舞曲のタンゴとクラシックやジャズを融合して独自の音楽を作り出したアルゼンチンの作曲家、アストル・ピアソラ(1921~92年)の生誕100年にあたる。ジャンルを超え多様な音楽を取り上げてきた硬派弦楽アンサンブル「石田組」もピアソラの演奏に力を入れる。9月20日にはびわ湖ホール(大津市)で
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日本歌曲の深い沼へ、ようこそ バリトン迎肇聡が導く世界
2021/3/9 12:00 1908文字オペラ歌手のリサイタルで日本歌曲を耳にする機会は多くない。華やかなオペラアリアや、ヨーロッパの大作曲家による歌曲が歌われることがほとんどだ。3月14日にびわ湖ホール(大津市)で初めてのソロリサイタルを開くバリトン、迎肇聡(むかい・ただとし)さん(43)は自らの意思で、あえて日本歌曲ばかりのプログラ
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「夜の女王」を引退したオペラ歌手、森谷真理が封印を解く理由
2021/1/26 15:54 3181文字音楽演奏は楽器を使った「身体表現」である。中でも身体そのものを楽器とするオペラ歌手は、アスリートの要素を色濃く持ち合わせた存在だ。オペラの「競技性」を象徴する役どころが、モーツァルト晩年の傑作「魔笛」に登場する「夜の女王」であり、この役をこなせる歌手は「超絶技巧を持つ希少な存在」として引っ張りだこ
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ハイドンが面白くないって本当? 古楽の大家・鈴木秀美さん語る「交響曲の父」
2020/12/5 08:30 3357文字音楽の授業で「交響曲の父」と教えられるフランツ・ヨーゼフ・ハイドン(1732~1809年)がどんな曲を書いたのか? 実際にイメージできる人は多くないかもしれない。クラシック愛好家でも、「ハイドンはつまらない」と思っている人が少なからず存在するようだ。曲が作られた時代の楽器・様式で演奏する「ピリオド
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21歳でSMAPの「Joy‼」作曲 “天才音楽家”津野米咲さんの遺作発売
2020/11/24 11:54 3129文字SMAPのヒット曲「Joy‼」の作詞・作曲者として知られるロックバンド「赤い公園」のギタリスト、津野米咲(まいさ)さんが29歳の誕生日からわずか16日後、10月18日に急死した。赤い公園は2012年のメジャーデビューから8年余り、大ヒットこそないが2枚目のアルバム「猛烈リトミック」が14年のレコー
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「1位を出さない」難関コンクールで1位、「葵トリオ」を聴くべき理由とは
2020/11/19 15:05 3092文字とある会合でアイドルの追っかけみたいな掛け合いが始まった。「先週、葵(あおい)トリオに会っちゃいましてね」「おがきょだね?」「ユウくん、いいよね!」……。1人目が筆者、2人目と3人目はプロの交響楽団のメンバー、初対面の3人によるウソのようなホントの会話である。「葵トリオ」はもちろんアイドルグループ
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演奏活動、半世紀 ヴァイオリニスト前橋汀子が挑戦を続ける理由
2020/11/18 09:28 3617文字ヴァイオリニスト前橋汀子は存在そのものが「歴史」である。冷戦まっただなかの1961年、「鉄のカーテン」の向こう側、ソ連のレニングラード音楽院に留学。続いて米国、スイスと渡り歩き、ヨーゼフ・シゲティやナタン・ミルシテインら世紀の巨匠のもとで腕を磨いた。俳優チャールズ・チャプリン、画家オスカー・ココシ
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ジブリ映画「耳をすませば」に携わった古楽器奏者、濱田芳通さんが語る中世音楽
2020/10/14 11:04 3074文字今から700年ほど前の中世に成立した音楽を再現する作業は、現代の歌謡曲や演歌の演奏と相通じる部分がある……。世界的に活動する古楽アンサンブル「アントネッロ」を主宰し、スタジオジブリ制作の映画「耳をすませば」の音楽にも携わったリコーダー、コルネット奏者の濱田芳通さん(59)にインタビューすると、多く
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「ライブが絶対」の落語家・桂まん我さんにネット配信を決意させたはがきとは?
2020/10/10 13:00 1442文字「落語はライブで見てもらうのが一番」。新型コロナウイルス禍にあっても、強い信念からネット配信を拒絶してきた気鋭の噺(はなし)家、桂まん我さん(48)が10月23日に神戸新開地・喜楽館(神戸市兵庫区)で開く落語会を、無料でストリーミング配信することにした。緊急事態宣言で社会活動が停止した時期も頑固に
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指揮者は指揮台で何をしているのか? セミナー聴講から、その役割をひもとく
2020/9/27 12:00 2269文字指揮者は指揮台の上で、いったい何をやっているんだろう。疑問に感じたことはありませんか? オーケストラより一段高い場所に陣取って客席に背を向け、演奏中は休むことなく不思議な踊りを続ける。本人が音を出さないんだから「いてもいなくても一緒じゃないの」と考えるのも無理はない。謎を解明すべく、びわ湖ホール(
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オペラは「ぜいたく品」ではない びわ湖リング指揮者・沼尻竜典が描く未来
2020/7/22 22:26 5575文字「ウィズコロナ」の世界でクラシック音楽のあり方はどのように変化していくのだろうか。新型コロナウイルスの感染拡大による自粛期間が始まった直後に、ワーグナーの楽劇「神々の黄昏(たそがれ)」を無観客上演・無料ライブ配信して延べ41万人の視聴者を獲得したびわ湖ホール(大津市)の芸術監督、沼尻竜典さん(55
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「#びわ湖リング」 ネットで41万人視聴のオペラ、ブルーレイで発売
2020/5/15 16:04 1018文字新型コロナウイルスの感染拡大により活発化した文化活動のネット配信で、先駆的な試みとして注目された滋賀県立の「びわ湖ホール」(大津市)によるワーグナー作曲「神々の黄昏(たそがれ)」が、ブルーレイの映像ソフトとして6月27日に発売されることが決まった。同ホールが5月15日、発表した。異なるキャストを起
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葬送行進曲で読み解く「#びわ湖リング」 原典回帰・演出の功績とは?
2020/3/26 17:00 5406文字「ジークフリートの葬送行進曲」はお好きですか? 「ニーベルングの指環(ゆびわ)名曲集」のタイトルでレコードやCDを制作するなら、十中八九収録される曲。ワーグナーの作品中でも屈指の有名曲ではあるが、ちょっと大げさで、心に突き刺さる美しい旋律が聴けるわけでもない。筆者は最初に聴いた中学生の頃に悪い第一
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