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ある仏像のミステリー=花澤茂人(大阪学芸部)
2023/3/24 06:00 2007文字数年前から、ある「仏像のミステリー」が気になっている。 「深大寺そば」が有名な東京・調布市の天台宗寺院・深大寺には、白鳳(はくほう)時代(7世紀半ば~8世紀初め)の傑作といわれる国宝・釈迦如来倚像(しゃかにょらいいぞう)が伝わる。椅子に腰掛けたような姿が特徴で、少年のようなあどけない表情が愛らしい
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「祈ったって意味がない」のか=花澤茂人(大阪学芸部)
2023/3/10 06:00 1442文字あれから12年が過ぎようとしている。2011年3月11日、私にとって東日本大震災の記憶は、前回のコラムでも紹介した奈良・東大寺の伝統の法会「二月堂修二会(しゅにえ)」と強く結びついている。 「お水取り」の名で知られる二月堂修二会は、毎年3月1日から15日未明まで、練行衆(れんぎょうしゅう)と呼ばれ
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僧侶・陽人のユーチューバー巡礼
限界に気づけない? 精神科医と考える「心の悩み」の今
2023/2/25 08:00動画あり 4680文字「自分はダメなやつ、を直す方法」「うつ病の9つの症状と、診断の3つの基準」。ホワイトボードの前でそんな心の問題を解説する白衣の男性は、精神科医の益田裕介さんだ。「早稲田メンタルクリニック」(東京都新宿区)の院長として日々診察を続ける傍ら、毎日のように動画を発信しているユーチューバーでもある。仏教の
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26歳、1272回目の祈りに臨む
2023/2/21 06:00 1755文字「お水取り」の名で知られる東大寺(奈良市)の伝統の法会、二月堂修二会(しゅにえ)の本行が3月1日から始まります。暗闇に浮かぶ大きなたいまつのイメージがよく知られていますが、堂内では僧侶たちが連日深夜まで、観音様に世の安穏を祈っていることをご存じでしょうか。2023年、ある若き僧侶が初めてその仲間に
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敵の怨念封じた? 空前の銅鏡と鉄剣を目にして考えた
2023/2/4 06:00 1696文字ニュースサイトや新聞に掲載された写真を見て、驚いた読者も多かったのではないでしょうか。1月25日に奈良市教委などが発表した、奈良市の富雄丸山古墳から出土した前代未聞の盾形銅鏡と、破格の大きさの蛇行剣と呼ばれる鉄剣のことです。取材で実物を目にした感動を振り返ります。【大阪学芸部・花澤茂人】 「こんな
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古墳時代の「最高傑作」は盾と鏡のいいとこ取り 研究者ため息
2023/1/25 17:01 1616文字「な、何やこれ?」。2022年12月、住宅街の一角で地肌をあらわにした山に、学生らの声が響いた。足元には1600年の眠りから覚めたばかりの盾形の板が鈍い光を放っている。おそるおそる取り上げ、直下の粘土層に顔を近づけると、幾何学文様が転写されているのが見えた。「ただの板やない」。水平な場所に運び、4
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僧侶・陽人のユーチューバー巡礼
道開くコトバの力 車椅子ユーチューバー、人生の変え方
2023/1/21 12:00動画あり 5715文字屈託のない笑顔で赤裸々に紹介するのは、車椅子での日々の暮らしだ。「現代のもののけ姫Maco」として活動するユーチューバー、渋谷(しぶや)真子さん(31)は4年半前、転落事故で下半身不随となった。常日ごろ直面する排せつ障害など、話題になることの少ない問題も包み隠さず、自ら明るく発信する原動力は何か。
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余ったお酒、どうする? 名刹を継ぐ「非2世」僧侶の挑戦
2023/1/21 06:00 1992文字新型コロナウイルス禍でここ数年中止されていた寺社の伝統行事を再開する動きが広がっています。奈良・大安寺でも23日、着物姿の「笹娘(ささむすめ)」が竹筒に入った日本酒を参拝者に振る舞う「光仁会 癌(がん)封じ笹酒祭り」が3年ぶりに通常に近い形で開催されます。しかしその間、大量のお酒が行き場を失いまし
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ホテルがお寺をのみ込んだ? 異例の“変身”を決めた古刹の真意
2023/1/7 06:00 2061文字普段はお寺と縁が薄くても、年末年始に除夜の鐘突きや初詣で訪れた方は多いのでは。皆さんはお寺のどこに魅力を感じますか。先日、そんなお寺のあるべき姿とは何なのか、議論を呼びそうな計画が大阪で発表されました。【大阪学芸部・花澤茂人】 「なんだこりゃ……」。2022年12月14日、記者発表の場で示された完
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「武器を捨て 数珠を持とう」 お寺の掲示板からのメッセージ
2022/12/14 06:00 2302文字通りかかったお寺の門前にある掲示板に、ふと目が留まる。そんな経験がある人は少なくないのではないでしょうか。近年、そんな掲示板のコンテスト「輝け! お寺の掲示板大賞」がじわじわと注目を集めています。5回目となる今年の受賞作品が5日に発表され、大賞にはある少年の作品が選ばれました。短い言葉に込められた
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「炎上寸前」の神社 悲劇免れた宮司の決意
2022/11/30 06:00 2250文字新人記者として奈良支局に赴任し取材のイロハをたたき込まれた時、火災発生時の取材では「けが人はいますか」「焼失面積は」といった質問と併せて聞きそびれてはならないことがあると教えられました。「出火元の近くに文化財はありませんか」。何気ない街角に貴重な文化財建造物がある奈良の町は、常に延焼の危険と隣り合
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僧侶・陽人のユーチューバー巡礼
「ゲイは不幸じゃない」 LGBTQユーチューバーが伝えたいこと
2022/11/26 11:00動画あり 5009文字LGBTQなど性的少数者をテーマに発信を続けているかずえちゃん(40)はゲイの当事者だ。動画では爽やかな笑顔を見せるが、10年ほど前まではセクシュアリティーを隠し、苦悩を抱えながら生きてきたという。誰もが生きやすい社会には何が必要か。葬送の場にも立ち会う僧侶ができることとは。ユーチューバー僧侶の小
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「逃げた男」と呼ばれた戦国武将
2022/11/16 06:00 1864文字11月初め、俳優の木村拓哉さんが戦国武将の織田信長にふんしてパレードした「ぎふ信長まつり」が話題となりましたが、京都には信長の弟・長益の顕彰に力を入れているお寺があります。「有楽斎(うらくさい)」とも呼ばれ、東京・有楽町の地名の由来になったこの人物は、ある事件をきっかけに不名誉なあだ名をつけられま
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息子と夫を亡くした女性が残したもの
2022/10/27 06:00 1785文字晩秋の奈良は「正倉院色」に染まります。あちこちに張られた奈良国立博物館(奈良市)の「正倉院展」のポスター、商店に並ぶ関連グッズ、目に見えて増える観光客……。町全体がどこか浮き立った雰囲気になるのを感じます。今年も29日に「第74回正倉院展」が開幕します。私は取材に訪れるたびに、ある女性のことを思い
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僧侶・陽人のユーチューバー巡礼
農作業は仏道修行? 77歳ユーチューバー「くよくよしない」生き方
2022/10/22 18:00動画あり 4259文字畑で大きなサトイモを収穫しすてきな笑顔を見せるのは、77歳の農業ユーチューバー「ひろちゃん」だ。広さ約250坪(約830平方メートル)の畑を舞台に日々野菜と向き合う姿を、長男の吉岡元晴さん(55)が撮影、編集して発信している。その元気と人気の秘密を知りたい。かねて「農家の方は仏教的な生き方のお手本
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五重塔はなぜ燃えなかったか
2022/10/13 06:00 1330文字猿沢池の向こうに興福寺の五重塔。奈良を代表するこの景色が、もうすぐ見られなくなります。五重塔の修理が2023年から本格的に始まるからです。奈良市民の一人としては寂しい気持ちもありますが、大切な塔を次の時代に受け渡していくために大切なこと。美しくなるのを気長に待ちたいと思っています。さて今回は、その
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秋の鹿は恋のにおい 「可愛い」だけじゃないその背景
2022/9/29 06:00 1247文字お彼岸も過ぎいよいよ秋めいてきましたが、読者の皆さんはどんな時に秋の気配を感じますか。私の場合、田んぼのヒガンバナや、果物売り場のナシやブドウを見た時でしょうか。今回はもう一つ、私の住む奈良の町ならではの秋の話題を紹介します。【大阪学芸部・花澤茂人】 奈良公園(奈良市)周辺では、秋の訪れを鼻で感じ
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僧侶・陽人のユーチューバー巡礼
「頭ん中お花畑」じゃダメ? ピロシキーズと考える戦争と平和
2022/9/23 13:00動画あり 5096文字端正な顔立ちから繰り出されるコテコテの関西弁。ロシア生まれ、関西育ちの小原ブラスさん(30)と中庭アレクサンドラさん(31)のコンビ「ピロシキーズ」は、お笑いや下ネタを交えたユーチューブ動画が人気だ。一方、2月24日のロシアによるウクライナ侵攻を受け、直後にプーチン政権を批判する動画を配信したこと
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ずぶぬれの天台座主 98歳の「祈り」に見た宗教の力とは
2022/9/9 06:00 1564文字「夕立」という言葉には趣を感じますが、近年は情緒も何もあったものではない「ゲリラ豪雨」ばかりになってきた気がします。今回はこの夏、ある聖地での取材中にものすごい雨に見舞われたお話を紹介します。【大阪学芸部・花澤茂人】 8月4日、天台宗の総本山・比叡山延暦寺(大津市)にいた私は、不安な思いで黒い雲を
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ざらついた肌の理由 大仏様が教えてくれたこと
2022/8/26 06:00 1544文字8月の終わりはなんだか寂しい気分になります。夏休みを惜しむ名残でしょうが、京都の五山送り火など情緒ある夏の伝統行事が多い関西で過ごしていることも影響していそうです。さて今回は、そんな8月の風物詩の一つに関する話題です。【大阪学芸部・花澤茂人】 「奈良の大仏」の手のひらに乗ったことがある。奈良支局員
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