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記者の目
連載「拡張する脳」を終えて 人間の尊厳支える技術に=池田知広(大阪科学環境部)
2023/5/31 02:00注目の連載 1909文字米実業家のイーロン・マスク氏が頭部に埋め込む機器を開発する企業を設立するなど、脳と機械をつなぐ技術に注目が集まっている。私はこうした脳に関する先端技術について2022年春から今春まで、同僚と共に連載「拡張する脳」で報告した。安全性の面など多くの倫理的な課題を内包するが、取材で出会った一人の開発者か
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対立解消の兆しなし 根強い政府介入の懸念 学術会議法改正案
2023/4/20 21:38 1413文字政府が日本学術会議法改正案の今国会での提出見送りを決めた。独立性を損ねるとして反発してきた学術会議側は歓迎するが、政府・与党は、これを機にさらなる見直しに踏み込む構えで、対立が収まる兆しは見えない。 「見送りは当然だ。学術会議に政府が直接手を突っ込むような法案だった」。菅義偉前首相に学術会議会員へ
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拡張する脳
脳と機械をつなぐ技術 どうなる戦場での実用化 専門家の見方は
2023/4/20 07:00 2434文字脳とコンピューターをつなぐ技術が、軍事応用の可能性を秘めているとして国際的に注目され始めている。戦場での実用化はまだ遠いとみられるが、どのような点に留意しておくべきなのか。2人の専門家に聞いた。【聞き手・池田知広】 ◇日本もルール作りに参加を ◇福士珠美・東京通信大教授 BMI(脳と機械をつなぐ技
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拡張する脳
「軍民両用」の脳科学技術 防衛装備庁が研究に乗り出した狙い
2023/4/19 07:00 2114文字ロケットや人工知能(AI)など、軍事利用と民間利用の両方に応用できる「デュアルユース(軍民両用)」技術。日本政府は研究機関に資金を出し、最先端の技術を発掘しようとしている。これまでは理工学が研究支援の対象だったが、近年になって脳科学など生命科学のテーマの研究支援にも乗り出している。 1月、国際神経
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拡張する脳
中国軍が関心、敵兵の「脳を支配」現実味は? 米中で研究加速
2023/4/18 07:00 2114文字脳と機械をつなぐ技術は、医療やビジネスの世界だけでなく、安全保障の分野でも実用化が模索されている。中でも米国と中国は、技術開発でしのぎを削る。国際学術誌「サイエンティフィック・リポーツ」のウェブサイトには、中国・杭州の浙江(せっこう)大が実施したある実験の映像が公開されている。 箱の中に迷路のよう
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始まりは1950年代 別府湾の泥に「記録」された現代の暮らし
2023/3/20 11:00 2161文字人類の痕跡が地層に残る、新たな地質時代として提唱されている「人新世」。大分・別府湾の海底の地層はその始まりを示す代表地点の候補として注目されているが、そこには、今の暮らしに欠かせない素材が環境を汚染し続けている「証拠」も刻まれている。堆積物でプラ汚染の変遷を分析 「別府湾はプラスチックの歴史を記録
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世界で戦えるロケットに暗雲 防災、安全保障…H3発射失敗の影響
2023/3/8 08:30深掘り 1328文字今後の宇宙開発の根幹を担うH3ロケット初号機が発射に失敗した。搭載されていた重要な観測衛星も失われ、日本のロケット技術への信頼低下は避けられない。新しい主力機で世界の宇宙ビジネスに打って出る日本の宇宙戦略は、早くも崩れ始めた。 商業市場に打って出て「世界で戦えるロケット」を目指すH3ロケットを切り
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H3打ち上げ失敗「原因究明は年単位」 信頼の2段目「まさか」
2023/3/7 20:58深掘り 1218文字今後の宇宙開発の根幹を担うH3ロケット初号機が発射に失敗した。搭載されていた重要な観測衛星も失われ、日本のロケット技術への信頼低下は避けられない。新しい主力機で世界の宇宙ビジネスに打って出る日本の宇宙戦略は、早くも崩れ始めた。 2月17日には発射直前に着火しなかった補助の固体ロケットブースターが、
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暮らしの中の科学
時計に水晶、なぜ使う? 電気との関係に秘密
2023/3/1 10:00 819文字クオーツ(水晶)時計の名称でも知られるように、ほとんどの時計には、鉱物の水晶が部品に使われている。宝石としても扱われる石が、なぜ時を刻むのに必要なのだろうか。 一定の周期を持つ物は、時間の「物差し」になる。振り子が長らく時計に使われてきたのも、一定の周期で揺れるためだ。 水晶は電気を流すと結晶が伸
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H3発射中止 JAXAは「設計通り」 トラブル、他のロケットでも
2023/2/17 20:47深掘り 1857文字今後20年間の日本の宇宙開発を担う新型主力機が、出だしからつまずいた。H3ロケットの発射がトラブルで直前に中止された。世界で急増する衛星の商業打ち上げ市場に打って出る、日本の宇宙戦略に影響はないのか。 種子島宇宙センター(鹿児島県)で据え付けられたH3の機体を、遠くから大勢の人が見守った。主エンジ
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H3ロケット「ブースター着火しない例、珍しい」 JAXA名誉教授
2023/2/17 12:09 485文字H3ロケット初号機が発射できなかったことについて、的川泰宣・宇宙航空研究開発機構(JAXA)名誉教授は「(補助ロケットの)固体ロケットブースター(SRB)に火が付かないケースは国内外を見ても非常に珍しい。SRB側のハードウエアの問題であれば、すぐに修正し再打ち上げできるだろう。だがもし主エンジンの
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拡張する脳
機械に意識を「移植」 東大発ベンチャーの挑戦
2022/12/22 05:30 2196文字生身の体が死んでも、機械の中で目覚めて生き続ける――。東京大発のベンチャー企業が、人の意識をコンピューターに「移植」する「マインド・アップローディング」の技術開発に取り組んでいる。「死」を逃れるという究極のブレーンテックが、本当に実現できるのか。この会社を起業した渡辺正峰・東大准教授に聞いた。 ―
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拡張する脳
国への忠誠心が解読される? 技術の危ない使い方
2022/12/20 05:30 2640文字政治思想が他人に解読され、為政者の意にそぐわない者が暴かれる――。そんな暗い監視社会の到来を予感させるような研究が、6月にウェブサイトで公開された。 「(中国共産党員の)政治思想教育の受け入れ度を把握し、学習効果を評価できます」。中国東部・安徽(あんき)省の合肥総合国家科学センターの人工知能研究院
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拡張する脳
脳波で車を操る時代は来るのか 自動車業界が熱視線
2022/12/19 05:30 2518文字流線型の黒いボディーに、水色に光るタイヤ。未来的なその車の中にハンドルは無い。運転席の脇に、段重ねの小さなケーキのように盛り上がった制御装置があるだけだ。運転手の頭には、ヘッドバンドが巻かれている。 ドイツのメルセデス・ベンツは2021年9月、「人が直感的に操作できる車」を、ミュンヘンで開かれたモ
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拡張する脳
「動け、動け」念じたら…究極のメタバースは実現するのか
2022/12/17 05:30 1917文字会場に設けられた大画面には、前傾姿勢になって走り出す人気ゲームの女性キャラクターが映し出されていた。操作していたのは、筋ジストロフィーを患い電動車椅子で生活する清水猛留(たける)さん(25)だ。 手元には、コントローラーもキーボードもない。頭にヘッドホンをしているだけ。念じることで、キャラクターを
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拡張する脳
イーロン・マスク氏が注目 「ブレーンテック市場」とは
2022/12/15 05:30 2692文字「頭蓋骨(ずがいこつ)の一部を、スマートウオッチに置き換えるようなものです。あと半年もすれば、人間の脳と接続できます」 日本時間12月1日、米サンフランシスコ近郊のベンチャー企業「ニューラリンク」本社内で開かれた説明会で、最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏は壇上に立って熱弁を振るった。そ
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拡張する脳
脳に「本音」語らせる? ドコモのCMの裏にある最新科学
2022/12/14 05:30 2992文字赤い詰め襟の学生服に、鉢巻きとたすきを身につけた人気俳優の浜辺美波さんが「応援団」になり、スーパーマーケットで買い物客に呼びかける。「たまる! たまる! たまるぞdポイント!」 そんなNTTドコモ(東京都)の15秒間のテレビCMが7月、全国で放映された。 このCMは、ドコモにとって初めての手法で制
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学術会議、外部評価委の機能強化へ 会員推薦に第三者関与 政府方針
2022/12/6 00:21スクープ 804文字日本学術会議(梶田隆章会長)について政府は、活動に意見を述べる外部評価委員会の機能を強化して新たに法的に位置づけるなど、学術会議の改革の方針を取りまとめた。日本学術会議法の改正などで対応する。学術会議側からの意見も踏まえた上で、改正法案の早期の国会提出を目指す。 菅義偉前首相による会員候補6人の任
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拡張する脳
脳波で操作 ALS患者がロボットによる接客に込めた思い
2022/12/1 07:00動画あり 1944文字「まずは、皆さんに手を振ってみますね」 男性の声が響いてから数秒後。白いボディーに、緑色に光る目をした近未来的なデザインのロボットの左手が上がり、ゆっくりと左右に揺れた。数十人の観客から「おおー」と感嘆の声が上がった。 このロボットを操っていたのは、全身の筋肉が動かせなくなる難病を患う武藤将胤(ま
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拡張する脳
「人類初の完全サイボーグ」を目指した難病博士の軌跡
2022/11/2 19:00 2412文字肉体を動かせなくても、仮想現実の中で不自由なく生き続ける――。英国のロボット工学者、ピーター・スコット・モーガン博士は「人類初の完全サイボーグ」を目指して自らを改造して機械と融合し、全身の筋肉が動かせなくなる難病を克服しようとしていた。志半ばの今年6月に64歳で死去したが、博士が希望を見いだしてい
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