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Sponsored Content NPO法人 生活の発見会

社会の混迷に「漠然とした不安」を抱く人が増加中 「あるがまま」を説く森田療法が今、注目されるワケ

 社会が複雑化する中、人々の生き方も多様化している。また、自然災害の多発や新型コロナウイルスの感染拡大など、社会を不安に陥れるような事象が相次ぐ中、心の危機に直面する人が増えているという。そうした中で、「それは当たり前のことだ」ということを前提に、不安との向き合い方を説いてきた日本発の精神療法、森田療法が注目されている。臨床の現場で同療法を取り入れてきた法政大学大学院人間社会研究科教授で東京慈恵会医科大学森田療法センター臨床心理士長の久保田幹子さんと、神経症当事者の会で森田療法を実践するNPO法人「生活の発見会」理事長の岡本清秋さんが、療法の今日的意義や、複雑化する社会で、どう心の健康を保っていけばいいかを話し合った。【聞き手・中根正義】

    生き方の多様化が招く不安感

    ──森田療法はおよそ100年前に誕生したそうですが、今年は、その自助グループである「生活の発見会」が生まれてから50年目という節目の年だそうですね。不安を取り巻く最近の傾向として、「漠然とした不安」を訴える人が増えているということを聞きました。久保田先生は臨床の立場から、このような患者さんが増えていることについて、どのように分析していますか。

    久保田先生: 現代は生き方が多様になっており、例えば男性や女性という性別にとらわれない考え方も広まっています。男性も女性も定型的な考えから解放され、自由度が増していますね。自由になるということは、自分が本当はどうしたいのかを問われることにもなるので、果たして自分は今のままでいいのか、どういう道を進めば安全なのか、やりがいがあるのか、と不安に思う人が増えているのだと思います。

    ──こうした背景にコロナ禍も重なり、「生活の発見会」への相談も増えているそうですね。

    岡本さん: 会員の皆さんから、コロナウイルスに対する不安を軽減するにはどうしたらいいのかという声や、機関誌でもコロナに関する記事を増やしてほしいという要望が出ています。一方で、コロナ禍ということで、その不安にばかり焦点を当てたり、コントロールばかりを考えたりすることで、ますます不安が増大するという指摘もありました。会員は神経症に加えて、疾病恐怖を抱えている方々もいるので、その観点からコロナとどのように向き合っていけばよいのか、そのヒントを探しています。

    20、30代の女性に多いパニック症

    ──最近、芸能人やスポーツ選手が自らパニック症であることを公表するようになっています。

    久保田幹子(くぼた・みきこ)/法政大大学院人間社会研究科教授・東京慈恵会医科大森田療法センター臨床心理長。 専門は森田療法,比較心理療法,臨床心理学。06年から現職。著書に『女性はなぜ生きづらいのか:森田療法で悩みや不安を解決する』(共著,白揚社)など

    久保田先生: 神経症にしろ、うつ病にしろ、そうした疾患にかかったことは隠しておきたいという風潮があったと思うのですが、メンタル的な問題を抱えたり、病気にかかったりすることは自然なことで、それがその人の価値を左右するものではないという認識がようやく生まれてきたと思います。今は明るく振る舞っているスポーツ選手などがパニック症だったということが公表され、精神的に強いと思われていた人でもメンタルの悩みを抱えているのだということが広く知られるようになってきました。カミングアウトすることで、自身も気持ちが楽になり、生きやすくなるだろうし、一般の人たちも普通のことだと捉えられるようになってきています。

    岡本さん: 私も、有名人がパニック症などの精神的な病を公表するようになったことは、いい風潮だと思っています。実は、私も勤めていた職場で同僚が目の前で突然死したのを目の当たりにし、その光景が頭から離れず、その後パニック症を起こしました。そして、森田療法と出合い、不安はあってもよい、目的に沿ってなすべきことをなしなさい、ということを学び、健康的な普通の生活が送れるようになりました。

    ──そもそもパニック症とはどのようなものなのでしょうか。

    久保田先生: パニック症は、ある日突然、めまいや動悸、冷や汗など強い自律神経系の症状が出現し、同時に、「このまま死んでしまうのでは」「自制を失ってしまうのではないか」と不安・恐怖が生じる状態を言います。発作自体は通常数分、長くても20、30分で自然に治まるのですが、放っておいたらこのまま死んでしまうのではないかという気持ちになり、病院に駆け込む患者さんも多いのです。ただ、多くの場合、病院に着くころには治まっていたり、検査を受けてもどこも異常がなかったりするのですが、一度体験すると、また起きるのではないかという不安につながってしまうのです。パニック発作などでまた具合が悪くなった時に、すぐに助けが求められない状況や、すぐに逃げ出すことができない状況を恐れ、それを避けたり、一人での外出を避けたりするようになります。これを「広場恐怖症」というのですが、パニック症は広場恐怖症を伴うケースが多いのです。

     パニック症は20、30代の女性に多く見られます。日本の場合は診断基準によってデータが違うのですが、調査する段階までに罹患した「生涯有病率」が0.6~0.9%、12カ月有病率は0.4~0.6%です。アメリカの場合は12カ月有病率が2~3%と日本の倍以上に及びます。日本と同様、女性の方が罹患率は高く、女性と男性の有病率はほぼ2対1です。

    悩みを共有し、分かち合う

    ──そうした神経症へのアプローチとして森田療法があるわけですが、自助グループである「生活の発見会」では、具体的にどのような活動をしていますか。

    岡本清秋(おかもと・きよあき)/ NPO生活の発見会理事長。 新潟県出身。大学卒業後、大手流通企業に就職、主に労働組合や不動産部門に勤務。30代前半に突然死恐怖、不安神経症に陥り、82年入会。17年から現職。森田で好きな言葉は「今を生きる」「社会的実践こそ最大の修行である」。趣味は格闘技のテレビ観戦。

    岡本さん: 生活の発見会では、有意義な人生を送るために役立つ森田療法のさまざまな情報を提供しています。それらをベースに学習することで、会員の皆さんがそれぞれより良い人生をめざしていくことになります。全国各地の集談会では「自分だけでない」という気づきを得るための活動をしています。具体的には体験交流(グループトーク)を中心に、悩みを共有する“分かち合い”作業を一定のサイクルを保ちながら実施しています。そうして皆で森田の考え方を学習しながら実践し、生命力をつけていくためのアドバイスを行います。

    私どもは医療と連携する「医生連携」を進めています。専門家を訪ねたほうがいいという方には医療機関を紹介します。生活の発見会は社会的訓練の場でもあり、このように医療機関と自助グループが連携することで、悩みを抱える方がより良い人生を送れるように活動しています。

    また、人生100年時代を象徴するような話ですが、最近は、少しでも悩みを軽減して人生を全うしたいと、80歳近くになってから入会される方もいらっしゃいます。生涯にわたって森田療法について学習し、こころ豊かな人生を送ってもらえるようにしていきたいと思っています。

    森田療法では「不安」と「欲求」は表裏一体だという考え方をする。「こうありたい」という理想と、「かくある」現実のギャップに思い悩むと、不安ばかりに注意が向き、とらわれてしまうことになる。そこで、こだわりすぎず、「あるがまま」、「かくある」自分を受け入れ、目の前のことに集中することで症状を改善していくという考え方をする

    ──医療の現場では、森田療法を用いた治療は、どのように行われていますか。

    久保田先生: まずは本人がどんなことで悩んでいるのかを丁寧に聞き取ります。患者さんは、不安や悩みを取り除かなければならない、克服しなければならないと考えがちなのですが、それはかえって症状を悪化させてしまいます。

     これを森田療法では「とらわれ」と理解するのですが、そうした堂々巡りに陥っていることを共有しながら、悩みや不安の背後にある「~したい」という欲求に従って生活できるよう支援していきます。具体的には、体調も不安などの心の動きも自然に変化するものとして、そのまま付き合い、少なくとも不安に振り回されずに行動するよう促していきます。多くの人は、こうした森田療法的な理解を知ることで、八方ふさがりの気持ちに、少し脱出の光が見えてくるようになります。それをよりどころに、体験や実践を重ねながら、さまざまな感情を受けとめつつ、自分らしい生き方の模索に力を注ぐことができるようになるのです。こうした「転換」を促すことが、森田療法のポイントです。

    “自分だけじゃない”というメッセージ

    ──生活の発見会は今年、50周年だそうですね。

    岡本さん: 「森田の学習はいのちの力を育む」という経験的信念のもとに、これまでに会員は累計で延べ18万人を数え、機関誌は推計で170万部を発行し、集談会参加者も延べ50万人を数えています。これだけの規模の方々の人生に影響を与え、悩みを軽減させてきたことで、50周年を迎えることができたのだと思います。

     厚労省の統計では、精神を病んでいる方は約420万人を数えます。これだけメンタルの悩みを抱えている方がいる現代では、森田療法の社会的ニーズはこれまで以上に高まっていると思います。森田療法が誕生しておよそ100年になりますが、その本質は不変であり、特にこれからはわかりやすい言葉やインターネットなども活用し、森田療法の素晴らしさを伝えていかなければならないと思っています。

    久保田先生: 自助グループが提供する「悩んでいるのは自分だけじゃない」というメッセージはとても大事です。医療現場では苦しみを理解してもらうとともに、それを解決するための援助が直接的に求められますが、自助グループの場合は、同じ苦しみを体験している仲間の存在が大きな意味を持つと思います。「こんな風に乗り越えていきたい、自分も同じようになれるかもしれない」と思えるようなモデルとの出会いや、苦しみを共に分かち合う仲間がいることは、悩みの堂々巡りから抜け出すモチベーションになるでしょう。

     「悩み」に対して自分がどのように向き合っていくか、それはその後の人生に影響していきます。私自身は、「柔らかな生き方」と表現していますが、ありのままの自分を受けとめる(あるがまま)といった柔軟性を身につけていくことが、自分らしく、よりよく生きることにつながると考えています。森田療法は、悩みや問題に対する関わり方だけでなく、よりよい人生を送るためのヒントにもなると思っています。そう考えると、さまざまな体験を分かち合える場として、発見会の意義は今後ますます高まっていくのではないでしょうか。


    NPO法人 生活の発見会

    神経症の悩みを抱える当事者の自助グループとして、1970年に設立(NPO許可2005年7月)。全国各地の約170名の協力医師、日本森田療法学会、メンタルヘルス岡本記念財団等と連携しながら、森田療法理論を学び、実践する自助活動を進めている。活動拠点は全国約130カ所。

    住所:東京都墨田区吾妻橋2-19-4 リバーあみ清ビル2F

    電話:03-6661-3800

    https://hakkenkai.org/

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