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社説

日本の岐路 借金大国の経済政策 ツケノミクス合戦は困る

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 「経済の再生」は、2012年末に政権を奪回した安倍晋三氏が「一丁目一番地」と呼ぶ、最優先課題だったはずだ。「アベノミクス三本の矢」はその看板政策だが、今なお矢は的を射ていない。

 「民主党政権時代にデフレ脱却、円高是正したか。できなかったじゃないか。だから今までの伝統的なやり方では駄目なんです」

 4年10カ月前、安倍氏は当時の民主党政権と日銀を猛批判した。政権交代が実現すると、日銀が非伝統的な異次元金融緩和を導入し、政府は大規模な財政出動を重ねた。

 しかし、物価上昇目標「2%」の達成に遠く及ばず、昨年9月には、「アベノミクス加速国会」と名付けた臨時国会で、事業総額28兆円の経済対策を打ち出した。それからさらに1年たつが、「デフレ脱却へのスピードを最大限まで加速していく」(衆院解散を表明した9月25日の記者会見)と、相変わらず「加速」のかけ声である。

目先の改善を優先

 自ら最重視したデフレ脱却が、5年近くたつ今も展望できないのであれば、責任を取り退陣するか、間違いを認め政策の大転換をはかるか、いずれかを選択すべきだろう。

 それを、目標の未達を理由に、追加策を打ち出しては、実行のため力を与えてほしいと、有権者に請う。

 アベノミクスとは、何だったのか。

 将来世代へのしわ寄せと引き換えに、目先の状況の改善を演出する。いわば「ツケノミクス」が、その実像といってよい。

 確かに、為替は円安に転じ、グローバル企業の業績が好転したことで、株価が上昇した。政府によれば、景気拡大は安倍政権誕生とともに始まり、今や戦後2番目の長さになったそうである。実感が乏しいとはいえ、経済の現状は決して悪くない。

 だが、将来世代の財産の先食いや、不人気な改革の棚上げなど、コインの裏側にも注目する必要がある。

 12年度末に705兆円だった国債の発行残高(国の借金)は、今年度末、865兆円に達する見込みだ。高齢者や赤ちゃんを含む国民1人あたりで計算すると688万円になるというが、実際は、今後細る一方の若年層にしわ寄せは集中する。

 景気が良い時に、増税など財政の健全化を進めておくべきところ、首相は2度も、消費増税を見送った。将来より目先を優先させたのだ。

 世界で飛び抜けて財政状況の悪い国が、このように放漫財政を続けると、普通は投資家の信頼が揺らぎ、長期金利上昇というブレーキがかかる。だが今は市場ではなく日銀が事実上、長期金利を決めている。ブレーキはないに等しく、政府はタダ同然で安心して借金を続けられる。日銀も政府のツケノミクスに乗った。

新たな危機のおそれ

 結果、日銀が保有する国債は、12年度末時点の125兆円から432兆円(9月20日現在)に膨らんだ。値下がりの恐れがある資産であり、将来のどこかで、経済危機の引き金となる危険を含んでいる。

 「地方創生」「1億総活躍」「働き方改革」……。次々と登場する政策のメニューに、今度は「人づくり革命」と「生産性革命」が加わった。「アベノミクス最大の勝負」(首相)だそうだ。

 将来世代に回すツケは増えたが、成長率を大幅に押し上げられれば、おのずと財政の健全化は進む。都合のいい計算が根底にある。

 そしてさらに、この大勝負のため、またお金を使うと言い出した。

 「ツケを未来の世代に回すようなことがあってはならない」と、10%への消費税引き上げで得られる収入の一部を、人づくり革命の「安定財源」として振り向けるという。

 もともと未来の世代に回すツケを軽減する目的の増税だ。他の目的に使えば、ツケがまた増える。

 では、小池百合子・東京都知事が結成した希望の党は、ツケノミクス脱却の旗手となるのか。

 政策の詳細はまだわからないが、10%への消費増税を、景気回復の実感が得られるようになるまで棚上げしたいと考えているようだ。

 そればかりか、法人税率の引き下げに前向きのようである。

 今以上にツケノミクスになるのでは、現政権に代わる勢力にふさわしくない。今さえよければ、選挙にさえ勝てば。そんな政策を重ねた結果が、税収の15年分という、とてつもない額の借金(国債残高)だということを忘れてはならない。

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