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自民党 消費増税、前面に出さず 政権公約を発表

衆院選に向けた自民党の政権公約を発表する岸田文雄政調会長=東京都千代田区の同党本部で2017年10月2日、川田雅浩撮影

 自民党は2日、衆院選の政権公約を発表した。安倍晋三首相が解散の理由に挙げた消費増税分の使途変更を盛り込み、憲法改正を重点項目に格上げした。岸田文雄政調会長は記者会見で「対決すべき野党はいまだ姿が見えていない。責任と実効性のある公約を掲げ、国民の信任をいただきたい」と表明。同党が希望の党に先がけて公約をまとめたのは、政権担当能力をアピールして違いを明確にする狙いがある。

    「北朝鮮」最重視

     首相は、2019年10月に消費税率を予定通り10%に引き上げることを前提に、増収分の使途を「国の借金返済」から教育無償化など「社会保障の充実」に振り向ける方針だ。これを踏まえ、自民党公約は「社会保障の充実と財政健全化とのバランスを取りつつ、子育て世代への投資を集中することで、『全世代型社会保障』へと大きくかじを切る」と明示した。

     ただ、公約が6本柱の最初に掲げたのは「国際社会による圧力強化を主導する」など対北朝鮮外交。首相は9月25日の記者会見で、消費税収の使途変更を解散理由として真っ先に挙げたが、公約では4番目になった。記者会見で理由を問われた岸田氏は「北朝鮮情勢は国民の大きな関心事だ。どれを優先するかはさまざまな議論があった」とかわした。

    「10%」自公のみ 10%にすれば5・6兆円の増収が見込まれ、首相は借金返済に充てる予定の4兆円のうち1・7兆円程度を幼児教育の無償化などに使おうとしている。しかし、公約は具体的な制度設計には触れず、岸田氏は「数字はこれから詰めなければいけない」と述べた。

     そもそも増収分の使途変更は、首相より先に民進党の前原誠司代表が同党代表選で提起した。自民党ではこれまで議論したことがなく、民進党から「争点つぶしの抱きつき」と批判された。しかも、希望の党代表の小池百合子東京都知事は首相の向こうを張って消費増税凍結を打ち出した。立憲民主党を結成する枝野幸男氏も増税には慎重。共産、社民両党は増税反対だ。主要政党で「10%」を唱えるのは自民、公明両党だけになり、「増税か凍結か」に論戦の焦点は移りつつある。

     首相は2日、東京都内での街頭演説で「消費税の使い道を見直し、社会保障を全世代型にしていく」と訴えたが、10%への引き上げには言及しなかった。選挙戦への影響を懸念して主張をあいまいにすれば、解散の正当性が問われかねない。程度の差はあれ、どの政党の主張をとっても、国の借金返済のペースは遅くなる。「財政健全化の旗は明確に掲げつつ、不断の歳入・歳出改革努力を徹底する」という自民党の公約は、消費増税分の使途変更と財政健全化を両立させる処方箋を示したわけではない。

     首相は消費増税を2回、先送りしている。3回目はないのか。岸田氏は「引き上げができるような経済を実現するため、アベノミクスを進めたい」と述べた。【野口武則、遠藤修平】

    改憲、中身は玉虫色

     自民党は2012年に安倍首相が党総裁に就任してから5回目の国政選挙で初めて、憲法改正を重点項目に据えた。党内には異論もあったが、20年の改正憲法施行を目指す首相の意向が最後は通った。しかし、各論を巡る意見集約のめどは立っておらず、公約の書きぶりは玉虫色だ。

     公約は、党憲法改正推進本部で議論している「自衛隊の明記」「教育の無償化・充実強化」「緊急事態対応」「参院の合区解消」の4項目を列挙。「憲法改正原案を国会で提案・発議し、国民投票を行い、初めての憲法改正を目指す」と記述した。岸田政調会長は2日の記者会見で「国民に憲法を意識してもらうためにも、より目に付きやすい形で示した」と説明した。

    党内反発に配慮

     5月の首相発言を受け、自民党は4項目の議論を開始。全体会合を計6回開いたが、憲法9条や緊急事態条項で意見対立が表面化した。

     特に、9条第1項(戦争放棄)と第2項(戦力不保持など)を維持しつつ自衛隊を明記する首相の提案に対する反発は強い。自民党が野党時代の12年に発表した憲法改正草案は第2項を削除し、「国防軍の保持」を明記した。草案起草に携わった石破茂元幹事長らは首相の考えを受け入れず、党内論議は収束する気配がない。

     同党はこれまで、憲法改正を公約集の最後に置いてきた。党内が紛糾するのを恐れた岸田氏は「結論が出ないなら、重点項目とは別にきちんと位置付ければいい」と着地点を探ったが、首相は9月23日、岸田氏に直接、重点項目化を指示した。公約で従来通りの扱いにとどめれば改憲への意欲が有権者に伝わらず、機運がしぼんでしまうと首相は懸念したようだ。首相の支持基盤の保守層をにらんだ対応でもある。

     とはいえ、単に「自衛隊の明記」と表記した今回の公約は妥協の産物といえる。これなら首相の提案にも2項削除論にも偏らず、「どちらにも読める」(党幹部)からだ。岸田氏は「公約は『党内外の十分な議論を踏まえ』という表現になっている。党内にいろいろな意見があるのは事実だが、公約の方針に沿って丁寧に議論していきたい」と述べ、苦心の跡をうかがわせた。

     そもそも、7月の東京都議選で自民党が惨敗した後、首相は改憲に関する発言を控えている。9月28日の衆院解散後、首相は既に4回遊説したが、改憲には触れていない。党内には「憲法改正は総選挙で問うものではない」(ベテラン議員)との声もあり、選挙戦を通じて改憲論議を深めようという雰囲気は、今のところ党内にない。【小田中大】

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    党派別立候補者数

      合計 小選挙区 比例代表 重複 (公示前)
    自民 332 277 313 258 284
    希望 235 198 234 197 57
    公明 53 9 44 0 35
    共産 243 206 65 28 21
    立憲 78 63 77 62 15
    維新 52 47 52 47 14
    社民 21 19 21 19 2
    2 0 2 0 0
    諸派 91 44 47 0 0
    73 73 0 0 44
    1180 936 855 611 472

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