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余録

「キュドス」とは以前の小欄でも触れた…

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 「キュドス」とは以前の小欄でも触れた古代オリンピックの「勝者の栄光」をいう。ホメロスの英雄叙事詩に出てくるこの言葉は神々に授けられた栄誉を意味し、勝者を霊的な威力を帯びたオーラで包んだという▲だからスパルタ王は遠征の際にはキュドスの持ち主で周りを固めた。競技会からの凱旋(がいせん)式で城壁の一部を壊して勝者を迎える都市があったのは、城壁すらも壊す強力なキュドスをたたえるためだった▲そんなキュドスの主には将軍や指導者として栄達の道も開かれたという(桜井万里子(さくらい・まりこ)ほか編「古代オリンピック」)。思い浮かぶのは、現代の民主主義における選挙もその勝者に政治的な霊力を与えるための仕掛けだということである▲突然の解散表明と希望の党の旗揚げ、民進党分裂に立憲民主党結党と急展開した衆院選も、投票箱が開けば安倍晋三(あべ・しんぞう)首相の当初の狙い通りとなった。加計(かけ)問題などで急減したキュドスの積み増しに成功して、政権継続の基盤を固めた▲有権者の多くにすれば野党再編のあわただしさに半ばあきれ、結局は与党の訴えた「安定」を選んだことになる。安倍政権の長期化には明らかに逆風が吹いていたにもかかわらず、分裂した野党はついに有効な選択肢を示せなかった▲ポスト平成へ、歴代のどの首相より長期の政権維持を見込めるキュドスをため込んだ安倍首相である。ここはその言葉通り少子高齢化の難所の突破に有効に用いてほしい。困るのは城壁破りのような独りよがりに蕩尽(とうじん)してしまうことだ。

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