大阪ダブル選の主な対立の構図

 大阪維新の会代表の松井一郎・大阪府知事と同政調会長の吉村洋文・大阪市長が8日、辞職を表明し、両氏が入れ替わって異例のダブル選に出馬することが決まった。結党以来、最大の公約である大阪都構想が行き詰まる度に「選挙」で局面を打開してきた維新だが、前代未聞の奇策に「党利党略」との批判も根強い。自民党は反維新勢力の結集を狙う構えで、維新がダブル選のいずれかでも落とせば党存続の危機になりかねない。

「成功体験」再現狙う

 「あらゆる手段を用いたが都構想がつぶされかけている」。8日夜、大阪市で記者会見した松井氏は「状況打破のため」と辞職の正当性を強調した。大阪市を廃止・特別区に再編して大阪府との二重行政を解消する都構想は、維新創始者の橋下徹・前大阪市長が2010年に提唱した至上命令の公約だ。今回の辞職は、都構想のために選挙カードを切った過去2回の成功体験に基づくものだが、維新が「3匹目のドジョウ」を得られるかは不透明だ。

 最初の「成功」は11年。知事だった橋下氏が大阪市長選へくら替えして都構想反対派の現職に圧勝し、議論が停滞した14年にも出直し市長選で勝利した。橋下氏は公明党に対して同年末の衆院選で小選挙区への対立候補擁立をちらつかせ、15年3月の制度案可決にこぎつけた。ところが15年5月の住民投票では約1万票差の否決。橋下氏は政界を引退し、都構想は挫折したかに見えた。

 しかし15年11月の知事・市長のダブル選で松井知事が再選され、市長に就いた吉村氏とともに再度の住民投票実施を目指した。最初の住民投票で示された「反対」の民意は、このダブル選で上書きされたという理屈だ。松井氏は8日の会見で「約束を守りたい」とアピールし、「(住民投票が実現すれば)これが最後。住民の判断にきちんと従う」と語った。

 ただ、選挙をてこに府市議会で再び公明の協力を得ようとした松井氏らの思惑は外れた。2回目の住民投票について「実施時期の確約を」と迫ったが、公明府本部は受け入れず決裂。松井氏らは振り上げた拳の下ろしどころを失い、みたびダブル選に突入せざるを得なくなった形だ。

 松井氏は8日、次期衆院選で公明候補への「刺客」を立てる意向を示し、なお揺さぶりをかけたが、立憲民主党の辻元清美国対委員長は「未練がましい。都構想はもう決着のついた話。独り相撲に府民を巻き込まないでほしい」と皮肉った。

 高い求心力を誇った橋下氏の引退後、都構想への府民の関心は低下。維新が次の住民投票で民意を問うとしている制度案も、否決された前回案と大差がない内容だ。松井氏は統一選で行われる府市議選で「単独過半数を目指す」と表明しており、ダブル選で関心を高めて打開したい考えだが、かえって有権者の反発を招く可能性もある。維新幹部は「有利にしろ不利にしろ、やるしか選択肢はない。負けたら潔く党を解散すればいい」と悲壮な覚悟を口にした。【津久井達、真野敏幸】

反維新包囲網、カギ握る公明

 自民党は大阪府知事・大阪市長のダブル選に対抗馬をそれぞれ擁立し、維新と全面対決する構えだ。維新と決裂した公明党の支援にも期待し、自民大阪府連を中心に、知名度があって維新以外が相乗りできる候補者を模索。「大阪限定」で反維新の国政与野党による包囲網を敷き、念願の府政・市政奪還を狙う。

 自民府連は知事選では著名人も含めて人選しているが、「候補が決まらなければ、府連会長が責任を取るべきだ」と左藤章副内閣相(衆院大阪2区)の出馬を求める声もある。市長選では、前回出馬して落選した元大阪市議、柳本顕氏を推す動きも。ただ、柳本氏は夏の参院選大阪選挙区(改選数4)で公認が決まっているため、党本部はくら替えには否定的だ。

 自民は維新をダブル選に追い込んだものの、松井氏らの辞職表明まで知事・市長の候補者を決められず、出遅れ感も否めない。左藤氏は8日、党本部で二階俊博幹事長と対応を協議。党幹部は「府連の問題を本部に持ってこられても困る」といらだちを示した。

 一方、自民は反維新勢力の結集に向け、立憲民主、国民民主両党などとも連携を模索。国政では与野党の立場で対立しているため、立憲は「政党色がない候補」が支援の条件だと自民側に伝えた。共産党は対応を検討している。

 もう一つの焦点は選挙戦での公明の対応だ。同党本部はこれまでダブル選への対応を党大阪府本部に委ね、その方針を追認してきた。ただ、統一地方選や次期衆院選への影響を懸念し「公明対維新とみられるのは得策ではない」(幹部)と焦りも募らせる。

 公明は統一選で候補者の全員当選が目標。大阪府議選と大阪市議選は維新などと議席を争う「最重点区」も多く、松井・吉村両氏が選挙戦で公明批判を繰り返せば、得票に影響が出かねない。このため党本部は「深入りすれば維新との亀裂が修復不可能になる」(幹部)と静観してきた。

 維新がダブル選で勝利すれば、新たな4年の任期が与えられ、その間に少なくとも1回は衆院選がある。衆院の公明現職がいる8小選挙区のうち六つが関西地域だけに、維新に「刺客」を擁立される展開にも懸念は根強く、交渉の余地を残すため「ダブル選では党として動かない」(関係者)とみる向きもある。【岡崎大輔、竹内望、村尾哲】