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あなたの参院選

日韓政治対立と韓国ブーム 女子高生「政治と文化は無関係」

平日でも新大久保にはたくさんの若者が集まり、買い物やグルメを楽しんでいる=東京都新宿区で2019年7月18日午後5時10分、北山夏帆撮影

 レーダー照射、徴用工、対韓輸出規制……と日本と韓国の政治状況が冷え込んでいる。ところが、日本の若者の間では空前の韓国ブームが起きているという。なにが起きているのか。取材を進めると、両国の新しい関係が見えてきた。【日下部元美】

中学生「ハングルも勉強」

 記者が東京・新大久保のコリアンタウンを訪れると、中高生や20代の若者がまちにあふれていた。平日のお昼過ぎにもかかわらず、まるで観光地のようなにぎわいだ。

 「自分の周りでは韓国のコスメ(化粧品)やアイドルがブームです」。埼玉県から来た中学2年、もえかさん(14)が大流行している韓国発祥のチーズドッグ「ハットグ」を手に取材に応えてくれた。韓国のイメージを尋ねると「おしゃれで流行の最先端。ファッションがかわいくてまねしたくなる」と魅力を熱く語る。もえかさんはハングルも少し読めるという。「アイドルが話していることを知りたいと思って自分で勉強しました」

 流行は女性の間だけではない。友人らとコスメ店にいた千葉県の高校生、安田圭吾さん(17)は週1~2回は新大久保に来ているそうだ。「2~3年くらい前に学校の先輩がTWICE(韓国の女性アイドルグループ)が好きで、自分も好きになった。メンバーに日本人もいて親しみがある」と照れながら話した。

新大久保の人気は原宿より上

 マーケティング会社・トレンダーズが運営する若年層トレンド調査機関「TT総研」が、無料通信アプリ「LINE」(ライン)を通して東日本と西日本の女子高校生計246人から回答を得た今年上半期のトレンドランキングでは、東西いずれの回答でも「チーズドッグ(ハットグ)」が2位に入った。韓国の女性アイドルが身につけて爆発的に人気が出た「うさみみ帽子」も東4位、西5位にランクイン。好きな場所を選ぶスポット編でも、東で新大久保が若者たちが集う原宿やディズニーランド・シーを上回る2位になり、西では韓国そのものが3位に入った。今後も新たな韓国のアイドルグループがランク入りすると見込まれ、トレンドは続くと予測されている。

 現在の韓国ブームは、K-POP、化粧品、グルメの3本柱。韓国企業は近年、アジア全体を中心とした海外展開に力を入れている。

伸びるチーズが「インスタ映え」するとして人気があるチーズドッグ「ハットグ」を食べる若者=東京・新大久保で2019年7月18日午後4時20分、北山夏帆撮影

 K-POPを代表する「防弾少年団(BTS)」は2014年に日本でデビューした。オリコンによると、3日にリリースした日本での10枚目シングルは週の売り上げが62.1万枚を記録して初登場1位になった。1位は4作品連続という。新大久保の韓国語教室「ハングルちゃん」の内田昌弘代表によると、受講生の9割は女性で主婦や会社員が中心。「以前はドラマを見て習いにくる生徒が多かったが、最近はもっぱら歌がきっかけです」と語る。

 韓国コスメも若い女性に人気がある。財務省貿易統計によると、08年に118億4356万円だった韓国からの「精油・香料及び化粧品類」の輸入額は、今回のブームが始まったとされる16年に262億6863万円になり、18年は364億5130万円と10年間で3倍に膨らんだ。

 画像投稿サイトのインスタグラムでは、韓国の男性芸能人の化粧やファッションをまねる日本人男性の投稿写真も少なくない。大手化粧品メーカーに勤める男性(28)は「最近はK-POPの影響から化粧をする若い男性が増えた。自分の会社でも韓国美容のトレンドを受けた製品を開発している」と語る。

第3次ブームは幅広いジャンルに

 今回の韓国ブームは第3次と呼ばれている。第1次は03年ごろから爆発的な人気を呼んだ韓流ドラマ「冬のソナタ」によるもの。第2次は10年前後で、少女時代や東方神起といったアイドルが本格的に日本でデビューし、NHKの紅白歌合戦にも出演した。ただ、どちらのブームもドラマ、アイドルの領域を大きく超えることはなかった。

 トレンダーズのソーシャルトレンドニュース編集部、奥村千尋さんによると、今回の特徴はアイドル、ファッション、グルメといった幅広い分野でトレンドが生まれていることだ。奥村さんは「K-POPが好きだから韓国コスメを選ぶという方向だけでなく、流行に敏感な子がトレンドを追うために韓国のコスメやファッションに関心を向けている」と分析する。同社が10~30代の女性180人を対象にした調査では、「韓国が最新トレンドの発信地だと思うか」という問いに10代の9割が「そう思う」と回答した。

生活に溶け込んだ韓国グッズ

 しかし、若者世代以外では、今回の韓国ブームを知らない人も多いようだ。背景にはSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)がブームを生み出している状況がある。奥村さんは「熱いところはすごい熱くて、そこに情報が集中している。雑誌やテレビを見ているだけじゃ若者の流行はわかりません」と指摘する。多くの10~20代は「アーリーアダプター」と呼ばれる流行の最先端をキャッチしている人をSNSでフォローして、情報を得ている。特定のネット空間だけで情報収集が完結しているため、そこにアクセスしない人には同じ情報が届かないという。新大久保で話を聞いた中高生もみなインスタグラムや動画投稿サイト「ユーチューブ」を使って情報を集めていた。

 取材では韓国のモノや文化が、一過性ではなく普段の生活に浸透していることも垣間見えた。韓国に留学している日本人ユーチューバーの動画などで食やメークに親しむようになった神戸市の女子大学生(24)は「日常の中の当たり前の選択肢のひとつに韓国のものがあるという感じなので、改めて韓国文化の何が魅力かと聞かれると答えるのが正直難しい」。奥村さんも「韓国だから、韓国という国が好きだからというよりも、可愛いから、おいしいからという感覚。コスメで言えば、デパートコスメ、ドラッグコスメ、そして、韓国コスメがあるという感じです」と説明した。

韓国コスメを扱う店に並んだフェースマスクを眺める女子高生=東京・新大久保で2019年7月18日午後6時14分、北山夏帆撮影

「好韓」に世代間格差

 内閣府が18年10月に行った調査では、「韓国に親しみを感じる」と回答した60~69歳が31.3%、70歳以上が28.2%にとどまったのに対し、18~29歳は57.4%に上り、世代間格差がある。

 新大久保を楽しんでいた中高校生グループに日韓関係のことを聞くと、冷え込んでいる国同士の関係を思い出したかのように「あ~」と一斉に口をそろえた。詳しくは知らなくても「政治的に仲が悪い」ということは認識しているようだった。高校2年の女子生徒(16)は「政治とこれ(文化)は関係ないですから。悪くても別に良いです。アイドルとか文化が好きな人からしたら関係ない」、中学1年の女子生徒(12)は「おじいちゃん、おばあちゃんにアイドルのグッズをねだると『韓国のアイドルだから』と嫌な顔をされた。正直『なんで』って思う。歴史のこととかアイドルには関係がないことを持ち出してこないでと思います」と答えた。埼玉県の女子高生(16)は「日本人が韓国でタクシーに乗ったら降ろされたという話を聞いたことがあり、悲しい気持ちになった。日本も『韓国のことをそんな悪く言わなくて良くない?』とも思う。オリンピックがあって、国際的なことをやらないといけない時だから、もっと日本も変わらないといけないと思う」と語った。

ロミオとジュリエットの関係

 こうしたパラレルワールドともいえる現象をどう受け止めればいいのだろうか。日韓の文化交流に詳しい一橋大学の権容奭(クォン・ヨンソク)准教授(国際関係史)は「日韓関係における『ニューノーマル(新常態)』現象といえるでしょう」と解説する。

 新常態とは、構造的な変化によりそれ以前のようには戻れない新しい状態を表す経済用語。権准教授はこれを日韓関係にあてはめ、文化交流や経済が発展して、以前のように政府間の関係が悪化するだけでは影響を受けなくなっていることを指摘。「1998年に金大中大統領と小渕恵三首相との間で署名されたパートナーシップ宣言以降に、社会、文化、地方自治などさまざまな面で急速に関係が深まりました。多元化・多層化した『複数の日韓関係』ができています」と説明する。

 ここでは韓国ブームに触れてきたが、決して日本の片思いではない。18年に日本を訪れた韓国人は前年比5.6%増の延べ約750万人だった。5100万人ほどの韓国の人口をそのままあてはめれば、7人に1人が日本に来た計算になる。非営利団体「言論NPO」(工藤泰志代表)と韓国のシンクタンク「東アジア研究院」が5~6月に実施した日韓共同世論調査では、韓国に良い印象を持つ日本人が20.0%で過去最低だったのに対し、日本に良い印象を持つ韓国人は31.7%で過去最高となった。日本の小説や芸能も親しまれている。

 権准教授は「韓国側はここ数年持続的に日本に対するイメージが良くなっていました。政治関係や国民感情の面での葛藤はあっても、お互いの良い文化にひかれ合うことは当たり前のこと。日韓関係が正常化する過程にあることを意味しています」と指摘。日韓関係をひとまとめにして考えようとする動きに対して、違和感を覚える若者たちは多いとみている。「政治や歴史の問題はわかったけれども、好きなものは好きなんだから好きにさせてよ、という思いでしょう。それをやめろという声は、思春期の子どもにこれもあれもダメと口出しする親と同じです。家同士は反発していても個人は互いにひかれ合う、いわば、ロミオとジュリエットのような関係です」と表現した。

若い女性を中心ににぎわうK-POPのうちわなどが並んだグッズショップ=東京・新大久保で2019年7月18日午後6時29分、北山夏帆撮影

文化交流は最後の砦

 第2次ブームは領土問題などの日韓関係が悪化した影響もあって、しぼんでいった。ヘイトデモなど苦しい時期もあったが、新大久保は若者たちによる韓国ブームで活気を取り戻している。両国政府の関係の冷え込みはどのような影響を与えるのだろうか。

 権准教授は、ネットの空間はコントロールしにくく、若者の時事問題への関心も高くないことから、目に見える形でブームが消えることはないとみている。韓国側でも、レーダー照射問題が起きた時であっても、テレビ番組で韓国の芸能人夫婦が北海道を旅行して岩井俊二監督の「ラブレター」を再現していたという。「現在も日本製品の不買運動が騒がれている一方で、ソウルにある天丼屋には開店前から行列ができています。私の見る限り、今はさほど影響がないです」

 とはいえ、経済戦争と呼ばれる深刻な状況に陥れば、「モノや商品を媒介にするブームは当然影響を受けるでしょう」とも懸念する。日本側では不買運動などが注目されて韓国へのマイナスイメージが膨らみ、韓国では「意図的に韓国だけを標的にしている」という憤りが急速に渦巻いているのも事実だ。「こうなると文化は最後の砦(とりで)です。文化交流まで冷却化されてしまったら、本当に日韓関係は危機的な状況になります」と語る。

 権准教授はこう強調した。「もっと交流の実態を互いが知る機会が必要です。今必要なのは、不買運動でも、旅行の自粛でもない。互いに好きなものは好きと言い合えばいいのです」

 

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 この連載は毎日新聞社とYahoo!ニュースによる共同企画です。参院選を新たな目線から伝えます。

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