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首相の地元を歩く

「安倍か林か選べ」 下関で苛烈な自民の政争 「桜」前夜祭の参加者倍増を招いた市長選/前編

地元後援会の新春の集いで支援者らと乾杯する安倍晋三首相。右は妻昭恵氏=山口県下関市で2018年1月8日午前11時54分、竹内望撮影

 安倍晋三首相主催の「桜を見る会」と、その前日に開かれた安倍首相後援会主催の「前夜祭」には安倍首相の後援者らが多数参加していた。山口県下関市にある首相の地元事務所は、この二つをセットにしたツアーを組んで参加者を募っており、前夜祭の参加者は2019年までの5年間で約400人から約800人に倍増したことが、これまでの取材で分かっている。首相はなぜ、公職選挙法違反の疑いすら指摘されるような後援者の「接待」を拡大させてきたのか。地元を歩くと、自民党内の激しい政争が浮かび上がってきた。2回に分けて報告する。【大場伸也/統合デジタル取材センター、佐藤緑平/下関支局】

 安倍首相のライバルである林芳正・元農相(自民党参院議員)が「新春の集い」を開くのに合わせて、私たちは1月11~13日の3日間、下関市内で集中的に取材をした。

 安倍首相は衆院山口4区(下関市、長門市)の選出である。林氏は県全域が選挙区の山口選挙区の選出だが、やはり下関市を地盤としており、地元政界を巻き込んだ勢力争いが長い間続いてきた。その構図や林氏の「集い」については後編で詳しく書きたい。

 印象に残ったのは、関係者の口が一様に重かったことだ。事前にアポイントを取った人、「アポなし」で直接会いに行った人、合わせて十数人に話を聞くことができたが、ほとんどの人に実名での証言を断られた。

 しかも、桜を見る会の詳細について尋ねると、「かん口令が出ている」「言わないことになっている」と言葉を濁す人が多かった。あえて人目につかない郊外の喫茶店を面会場所に指定してくる議員、「(自分の発言は)匿名ぞ、匿名ぞ」と何度も確認する社長……。何度電話をかけても出てもらえず、自宅を訪ねてようやく玄関先で短く話を聞けた人もいた。

 しかし、匿名の証言をつなぎ合わせると、「前夜祭」について、安倍首相のこれまでの説明とは違う実態が浮かび上がってきた。

 まず、前夜祭の何が問題になっているのかを振り返っておきたい。

 19年の前夜祭は桜を見る会の前日の4月12日、ホテルニューオータニ東京(東京都千代田区)の「鶴の間」で開かれた。参加者によると、立食形式のパーティーでアルコールは飲み放題。銀色のプレートにはオードブルや炒め物、パスタなどが並び、シャンソン歌手の歌の披露もあった。

 安倍首相は5000円の会費制だったと説明しているが、安すぎるとして野党は「安倍事務所が差額を補塡(ほてん)したのではないか」と追及してきた。補塡していれば、公職選挙法が禁じる有権者への寄付にあたる可能性がある。首相の関連政治団体の政治資金収支報告書にこの前夜祭の記載がないことが、疑惑をさらに深めている。

 これに対し、首相は国会や記者団に「受付で安倍事務所の職員が1人5000円を集金し、ホテル名義の領収書をその場で手交し、集金したすべての現金をその場でホテルに渡した。受け付けの際には、ホテル側職員も立ち会っていた」と説明してきた。

 安倍事務所の職員は集金を代行しただけで、後援会にお金の出入りはないので政治資金収支報告書への記載は不要だという主張だ。

 実際はどうだったのだろうか。19年の前夜祭に参加したという複数の人物から、次のような証言が得られた。

 「妻の分を払わず会場に入ってしまった」

 「受付にいたのは5人前後。あれで何百人…

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大場伸也

1973年生まれ、2000年入社。船橋、千葉支局、政治部、経済部、長崎支局、小倉報道部を経て現職。政治の記事を中心に執筆しています。野球好き。学生時代にバイトしていた新宿ゴールデン街に出没します。

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