7月5日投開票の東京都知事選は終盤に差し掛かっているが、論戦のなかで大事な何かが忘れられているような気がしてならない。原発の問題だ。2014年の前々回の都知事選では有力候補者が「脱原発」を掲げ争点の一つとなったが、今回主要候補者は、街頭演説でほとんど原発について触れていない。都政を巡っては新型コロナウイルス対策や東京オリンピック・パラリンピックの開催の可否などの課題が山積しているため、関心が低くなっているのかもしれない。だが、東日本大震災の被災地からは「電力の大消費地として、議論をしてほしい」といった声も聞こえてくる。【古川宗/統合デジタル取材センター】
14年の都知事選では、今回出馬している元日弁連会長、宇都宮健児氏(73)や元首相の細川護熙氏(82)が「原発ゼロ」を前面に打ち出し、大きな話題となった。細川氏は同じく元首相の小泉純一郎氏(78)の支援を受けるなどして脱原発の争点化を狙った。だが、五輪の成功や社会保障を中心に訴えた舛添要一氏(71)が当選。ただ、舛添氏の211万票に対し、原発ゼロを訴えた宇都宮氏と細川氏を合わせると193万票を獲得するなど、一定のムーブメントになった。そして、16年の都知事選では、野党4党の統一候補として出馬したジャーナリストの鳥越俊太郎氏(80)が原発ゼロを訴えたが、3位にとどまった。
東京電力福島第1原発事故から9年が経過した今回の都知事選では、各陣営、…
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